研究課題/領域番号 |
26800138
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高橋 覚 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 研究員 (40402432)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原子核乾板 / 時間分解能 / ガンマ線 / ニュートリノ / 宇宙線 / 加速器実験 |
研究実績の概要 |
時間分解原子核乾板多段シフター(多段シフター)は、本来時間分解能を持たない原子核乾板に秒以下の時間分解能の付与を可能にし、気球搭載原子核乾板ガンマ線望遠鏡を実現する。大面積で長時間の気球フライト観測を実現することにより、従来の宇宙高エネルギーガンマ線観測に対して、一桁近く優れた角度分解能での撮像観測、およびこの帯域では有意な観測がなされていない偏光観測を可能にする(GRAINE計画)。また、多段シフターの大面積化・長時間化は、原子核乾板を使った新たな加速器実験や宇宙線観測の可能性を拓く。本研究開発では、従来型(ステージ板スライド方式)の単純な拡張では困難な大面積化・長時間化を実現するためのモデルのプロトタイピングを目的とする。 大面積・長時間モデル(ローラー駆動方式)の概念設計をおこない、仕様を固めた。従来型の多段シフターを共同開発してきた三鷹光器社と議論を重ね、詳細設計を仕上げた。そして、実際に大面積・長時間モデルの試作機構築を開始し、1段目が完成した。完成した1段目については駆動テストをおこない、設計値程度の駆動再現性が得られていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実際に大面積・長時間モデルの試作機構築を開始できた。また、これまで開発を進めてきた次期気球実験で用いる多段シフターについて、低温特性の大幅な改良や、ステージ間ギャップを詰める改良に成功し、次期気球実験においてミリ秒オーダーでの運用が実現可能な状況に到達できた。また、J-PARCにおける原子核乾板を用いたGeV領域ニュートリノ反応精密測定実験において、原子核乾板に時間分解能の付与が必要となり、加速器ニュートリノ実験において初めて多段シフターを導入した。そして、0.25-1.25秒の時間分解能で、通算126日にわたり安定した運用に成功した。また、原子核乾板ガンマ線望遠鏡の初めての気球実験(2011年度にJAXA大樹航空宇宙実験場で実施)で得られた成果(多段シフターによるタイムスタンプも併せた解析結果も含む)をまとめた論文が「Progress of Theoretical and Experimental Physics」に受理された。また、多段シフターの開発状況をまとめた論文が応用物理学会放射線分科会会誌「放射線」に掲載された。また、これまでの多段シフターの開発功績が認められ、2014年度日本写真学会進歩賞を受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
大面積・長時間モデル試作機の詳細な駆動テストをおこない、挙動の理解を深める。その経験・実績に基づき、改良を図りながら試作機の構築を進める。並行して、来る次期気球実験を成功させ、多段シフターの気球実験における経験・実績を培う。また、加速器ニュートリノ実験で運用した多段シフターの原子核乾板の解析を進め、実際にニュートリノ反応事象に時間分解能を付与し、ニュートリノ反応解析につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の交付額はほぼ全て使用し、極めてわずかな割合の未使用額について、繰越制度を活用し、次年度へ繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入等に充てる。
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