研究課題/領域番号 |
26800145
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
三宅 晶子 茨城工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 講師 (00613027)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 銀河宇宙線 / 銀河磁場 / 超新星残骸 / 数値実験 |
研究実績の概要 |
研究計画に基づき、平成26年度に構築したJansson et al. (Astrophys. J. 757, 2012)の銀河磁場およびそれに依存した拡散効果を考慮した銀河宇宙線伝播モデルを、銀河宇宙線電子・陽電子の場合にも適応できるように改良した。具体的には、銀河宇宙線電子・陽電子のエネルギー損失(想定した銀河磁場や物質密度分布に応じたシンクロトロン放射および逆コンプトン散乱)の考慮、既知の太陽系近傍の若い超新星残骸の年齢および空間分布の導入、またそれら既知の超新星残骸の年齢に応じた、超新星残骸の大きさの変化および超新星残骸から逃げ出す銀河宇宙線のエネルギー変化の考慮があげられる。これらを考慮した上で銀河宇宙線電子の銀河系内伝播の数値実験を行った結果、以下の研究成果を得た。 ・予想通りTeV領域の銀河宇宙線電子は太陽系近傍の若い超新星残骸に起源を持つ。 ・銀河宇宙線の源の候補としてあげられる超新星残骸のエネルギースペクトル形状への寄与の程度は、上述した超新星残骸の大きさや宇宙線の逃げ出しのエネルギー依存性をどう考慮するかに依存する。 ・銀河宇宙線陽子と同様、電子の場合にも拡散係数の銀河磁場に対する異方性や運動量依存性をどう導入するかで源となる超新星残骸の空間分布が大きく変化し、結果として得られるTeV領域のエネルギースペクトル形状も大きく変化する。 複数の銀河宇宙線二次成分・一次成分比や放射性核種の同位体比を再現することで拡散係数のモデルに制限が付き、さらにそれと同様の拡散係数を想定して電子の伝播計算を行うことで、電子のTeV領域のエネルギースペクトルにも制限がつくはずである。これを実現するために、銀河宇宙線と星間空間物質との核破砕反応の衝突断面積のエネルギー依存性を数値的に導出することを検討しており、その準備も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り、銀河宇宙線電子・陽電子にも適応可能な銀河宇宙線伝播モデルを構築した。銀河宇宙線と星間空間物質との核破砕反応の衝突断面積に関する実験的・経験的な情報が不足している点は本研究課題の計画当初は予期していなかった点であったが、PHITSコードを用いてそれを比較的容易に導出することを検討しており、その準備も開始した。この他、平成26年度から補足的に開始していた太陽変調効果の数値実験モデルの改良は、過去の22年周期変動(荷電依存性)も再現可能なレベルにまで到達した。数GeV/n以下の銀河宇宙線を取り扱う際に不可欠な要素であるので、今後のより精密なモデル構築への寄与が期待される。また平成28年度に計画している核破砕反応を考慮した数値計算の準備のために、平成28年度の予算を前倒し請求して計算機環境を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の実施計画に従い研究を進める予定である。平成28年度は、平成26年度の研究で得た銀河宇宙線の通過物質量分布を用いて銀河宇宙線と星間空間物質との核破砕反応による核種の変化およびエネルギー変化を数値計算することにより、地球近傍で期待される二次起源銀河宇宙線(電子の二次起源成分、陽電子、反陽子)のエネルギースペクトルを計算する。 なお、平成28年度は高専機構在外研究員としてアメリカNASAゴダード宇宙飛行センターに派遣された状態で研究を実施する。本研究に必要な研究設備(計算機等)はすべて移動し、これまでと同様の研究環境を整えている。また研究時間についても、これまでと同様あるいはそれ以上の時間を本研究に費やすことができるので、本研究の遂行に支障はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究遂行の環境準備のために予算を前倒し請求してソフトウェアを購入したが、当初の予算見積もりよりもソフトウェアを安く購入する事ができ、差額として1250円が余った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に予定している科学雑誌への論文投稿費用の一部として利用する。
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