研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ハイパー核研究の新たな段階の一つとして注目されているsd殻領域のΛハイパー核について、原子核殻模型により得られる波動関数を用いて、生成断面積、電磁遷移強度、崩壊幅を実験に先駆けて理論的に予測することである。そして、sd殻領域のハイパー核のエネルギーレベルの構造を明らかにし、sd殻領域におけるΛN有効相互作用の各項の強さを決定することである。 平成26年度は、sd殻領域で実験が予定されている19F原子核に対して、波動関数を得るところから始めた。コアとなる原子核について、様々なNN有効相互作用を試すことにより、エネルギー準位や一粒子移行反応の実験結果をよく記述できる波動関数を得た。ハイパー核に対しては、ΛN有効相互作用としてs殻、p殻領域のハイパー核研究で実績のあるNijmegenグループの核力 (NSC97f) のG行列を有効相互作用として用いた。 得られた殻模型波動関数を用いて、19Fを標的核として得られるハイパー核の生成断面積の計算を行った。生成反応にはおもに、(π+, K+), (K-, π-), (γ, K+) 反応の3種類があるが、(K-, π-)反応について実際に行なわれる実験のセットアップを想定しながら、いくつかの入射運動量と散乱角に対する生成断面積を計算した。この計算結果を、並行して行なった(π+, K+)反応の生成断面積の計算結果と比較すると、大きな断面積に寄与する状態の違いが鮮明となった。この結果と、これから行なわれるJPARCでの実験結果とを比較することによって、sd殻領域のハイパー核の複雑なエネルギーレベルの構造を解明することができると予想される。
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