研究実績の概要 |
複素ランジュバン法を用いた低温・有限密度格子QCD研究を行った。特に、複素ランジュバン法のシミューレションに必要となる正当性条件の構築、および低温・有限密度格子QCDへの応用を行った。正当性条件の構築では、先行研究で導出されていた正当性条件[Aarts et al 2009]では、条件の定性性や、高次元理論に対する実用性の低さの課題があった. 我々は、ドリフト項の確率分布を用いて、これらの点に対する改良の施された判定条件を導出した。この条件を、厳密解の知られている2つの理論、2次元Yang-Mills理論およびカイラルランダム行列理論に応用して、ドリフトの確率分布を用いた判定条件が正しく機能していることを実証した. また, 2つの理論はexcursion問題および特異ドリフト問題を含んでおり、新しい判定条件が両者の問題を統一的に扱えることも示した. QCDへの応用では、まず、前年度に行ったゲージクーリングを用いた解析を、十分に長い藍綬版時間(t>100)まで継続して行った。パラメータによってはシミュレーションがかなり長いランジュバン時間まで継続可能であるものの, ユニタリティノルムやドリフトの大きさのモンテカルロヒストリーに、正当性条件を破るようなピークが時々現れ、正当性条件の破綻が示唆された. そこで、次に、作用の変形(deformation)を用いたシミュレーションを行った。Deformationの技法により特異ドリフト問題が効率よく回避され、外挿によるQCDの結果を得ることができた。 クォーク化学ポテンシャルがパイ中間子質量の半分を超える領域のシミュレーションが遂行でき、本研究の当初の目標を達成することができた.
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