研究成果として第一に挙げられるのが、Belle II実験用ビームバックグラウンド計測のためのダイヤモンド検出器の量産である。平成27年度までに開発した試作機の仕様に基づき、必要数28個のダイヤモンド検出器の製作を完了した。現在、これらの量産品の性能評価試験として、1)暗電流のI-V曲線測定、2)Sr90によるβ線の応答測定、3)Sr90からの単一電子事象を用いた電荷収集効率の測定、4)Am241からのα線を用いた電子・ホールの移動度測定を行っている。これまでに、28個中14個分(50%)の検出器に対して性能評価試験を終わらせており、結果として十分な性能が得られることを確認した。残りの検出器に関しても、同様に性能評価試験を進め平成29年中に全数の試験を終わらせる予定である。これらは実際にBelle II検出器に組み込まれビームバックグランド計測器として用いられる。 最後に研究成果として第二に挙げられるのが、Belle II実験に向けたSuperKEKB加速器の試運転による、ビームバックグランドに対するダイヤモンド検出器のビームバックグラウンド計測試験である。この試運転での計測試験は平成28年1月から約5ヶ月間行った。この計測には計4個のダイヤモンド検出器を導入した。この試験ではダイヤモンド検出器からの電流測定を行い、この電流値からバックグラウンド線量の算出を行った。電流値とバックグランド量の関係は検出器のシミュレーションを行うことにより導出し、これによりビームバックグランド線量計測が可能であることを確認した。さらにこれにより、試作の検出器信号の読み出し回路が十分な性能を持つことを確認し、読み出し回路の仕様を決定することが出来た。
|