研究課題/領域番号 |
26800158
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
佐久間 史典 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 専任研究員 (10455347)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | MPPC / 高時間分解能 / TOF / K中間子原子核 |
研究実績の概要 |
複数のMPPCを直列接続してプラスティック・シンチレーターを読み出すことにより、100ps以下の時間分解能を有した小型で安価、ロバストな検出器を開発すべく、今年度は下記の基礎開発を行った。 ・小型のプラスティック・シンチレーター(100*30*5mm^3)の両端にそれぞれ3つMPPCを直列に接続したテスト検出器を作成した。シンチレーターのラッピング材は3M社製の輝度上昇フィルム(ESR)を用いた。シンチレーターにMPCCを直接固定する治具の開発も同時に行い、J-PARCでの実験に用いる検出器の基本設計を完了した。この治具を用いる事で、シンチレーターとMPPCを接着せずに再現性良く取り付けることが可能となり、問題が生じた際に簡単にメンテナンスを行う事が出来るようになる。 ・RFアンプを用いた低ノイズ/高時間分解能プリアンプの開発を行った。ここではRFアンプ数種類をテストし、ノイズ特性/時間分解能/ダイナミックレンジ等の最適化を行った。また、ポールゼロキャンセル回路の導入やゲインの最適化も行い、高時間分解能を目指したMPPC検出器用のプリアンプのプロトタイプを完成させた。開発したプリアンプを用いて上記テスト検出器の基本的な性能評価を行い、100ps弱の時間分解能を達成していることを宇宙線を用いたテストで確認した。 次年度も引き続きこれら基本性能の検証及び開発を進め、J-PARC E15実験及びS=-2ダイバリオン探索実験のための検出器の実機作成を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MPPCを用いた検出器の計本設計は完了し、J-PARCの実験で用いる検出器(beam-lineに組み込むTOF検出器)の基本設計もその大部分が完成した。また、テスト機を用いた宇宙線測定により、目標時間分解能もおおよそ達成していることを確認し、実験で要求される性能を満たせることを確認した。 本年度はこれらの実機作成に向けた基本的な性能の調査に特化したため、シンチレーター長依存の調査は次年度はじめに行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度得られた結果を基に、J-PARCで行うE15実験、及び、stopped-pbarビームを用いたS=-2ダイバリオン探索実験のための「start counter (T0)」を作成する。この検出器は液体3He標的直前に置かれている既存のbeam-line trackerに組み込むTOF検出器であり、大きさがφ120mmの8セグメント分割型検出器である。 また、MPPCを3つ直列で読み出したときのシンチレーター長依存を調べる。特に、原子核実験で良く用いられる長さ300mm程度のシンチレーターで高時間分解能(100ps程度)を達成出来るかどうかを詳細に検討する。同時に引き続き高速/低ノイズのプリアンプの開発も進めていく。 これらの性能を宇宙線で確認した後、J-PARC K1.8BRにおいて1GeV/cのπビームを利用して時間分解能の入射位置依存性等を確認する。実験はK1.8BRエリアのビームダンプ前にテストセットアップを組むことにより行う(2015年秋予定)。 以上により、MPPCを用いた高時間分解能TOF検出器の基礎開発を完遂し、論文や学会等で成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
異なるタイプのテスト機作成のために必要なMPPC/シンチレーター等を購入することを延期したため、次年度繰り越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算と合わせて、テスト機及び実機作成のために必要なMPPC/シンチレーター等を購入する。
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