今年度は、昨年度に開発した相対論的輻射優勢衝撃波の一次元定常解を構築する計算コードの高精度化及び高速化を行いました。本研究で用いる計算コードは、反復法によって衝撃波の上流から下流に至るまでの全領域におけるプラズマと光子の空間及びエネルギー分布を導出するものですが、昨年度の段階ではプラズマの温度の収束性があまり良くなく10パーセント以上の誤差が生じていました。本年度加えた高精度化によって、その誤差は数パーセント以内に抑える事に成功し、より高精度な解を求める事に成功しました。これにより、本研究の主な目的である光子のエネルギー分布のより精密な評価を行う事が可能となりました。また、計算コードを並列化させることによって計算の高速化を実現し、様々な状況設定における衝撃波の系統的研究が可能となりました。
本研究からは、衝撃波上流の光子のエネルギー密度がプラズマに比べて卓越している場合は、衝撃波の伝搬速度によらず光子は熱的分布となる事が分かりました。その一方で、衝撃波上流のプラズマのエネルギー密度が光子を卓越している場合は、光子のエネルギー分布は熱分布から大きく外れた非熱的なものとなり、光子の最大エネルギーは衝撃波の伝搬速度が速いほど高くなる事が分かりました。この結果は、ガンマ線バーストの非熱的スペクトルの起源がジェット中に普遍的に存在している輻射優勢衝撃波によって説明できる可能性を示唆しています。定常解の研究と平行して本年度行った相対論的ジェットの数値シミュレーションに基づいた研究からも、ジェット中に生じた衝撃波が非熱的スペクトルの起源となる事が示されており、これらの結果は合わせて長年の謎となっているガンマ線バーストの放射機構の解明につながると期待されます。
|