研究課題/領域番号 |
26800160
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
林 克洋 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (40713863)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ASTRO-H衛星 / 軟ガンマ線検出器 / 宇宙線 / 星形成領域 |
研究実績の概要 |
本年度は、ASTRO-H衛星に搭載される軟ガンマ線検出器(SGD)の開発に、開発のコアメンバーとして、大きな尽力を注いだ。SGDは、星形成領域からの核ガンマ線検出が期待される他、硬X線撮像検出器との同時観測により、プラズマからのハードなX線検出により、星形成領域の進化や、宇宙線拡散のプロセスを明らかすることが期待されている検出器である。本年度の初頭は、SGDに搭載される合計6台のコンプトンカメラの単体環境試験に望み、それらが衛星搭載品として十分な性能を満たすか検証試験を実施した。その後は、各カメラのシールドとしての役割を果たす結晶シンチレータをSGD本体に組み込み、ハウジングと合体させた後に、それらのシールドが、反同時計数の読み出しによる、バックグラウンド低減のための機能を十分に果たしているか確認試験を行った。フライトモデル品が完全に組み上がった後は、衛星に搭載される2台のSGDに対して、打ち上げの際にかかる振動を模擬した振動試験や、実際の宇宙環境を模擬した熱真空試験など、数ヶ月に渡って実施されたこれら全ての試験に赴き、検出器に異常が発生していないかの確認や、軌道上で使われる波形処理のためのパラメータサーチなども行い、最適な観測モードを確立させた。これらの尽力により、SGDは今年度末に無事に単体環境試験を突破し、現在衛星に取り付けられたところである。またこれらの成果は、国際学会でSGDチームの代表として報告している。 一方で、Fermi衛星を用いた分子雲などの星形成領域の解析も、名古屋大学の電波グループとのコラボレーションのもと研究進めており、Fermi衛星チームの会合でも、現状の研究成果を報告するなど、精力的な活動を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はASTRO-H衛星搭載のSGDチームのコアメンバーとして、精力的に働いた。SGDチームのコアメンバーは大学関係者が多く、私のように長期間試験の現場に赴くことができる研究者が少なかったため、検出器開発の活動の方が優先された。ただしその一方で、数々の試験の現場に赴いたことで、SGDのシステムと衛星搭載品の検出器としての性能を十分に把握でき、チームを代表して、今後運用を行っていくための計画書類を執筆したり、国際学会での発表を行うなどといった貴重な経験を積んだ。これらの経験は、今後SGDの運用やそれを用いた星形成領域の研究を引っ張っていくための、非常に有効な財産となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度のSGD関連の作業としては、解析をしていくためのソフトウェアの開発が主な仕事となる。その中でも私は、SGDの衛星搭載品の性能や、システムとしての構造を理解しているものとして、その性能を十分に引き出すために、解析ソフトウェアの作成に貢献していくこととなる。それは、バックグラウンド信号に埋もれやすい、核ガンマ線や、星形成領域からの硬X線の探査を行っていく上で、非常に重要な仕事なる。その一方で、今年度末、ASTRO-H衛星が打ち上がって以降の観測プランを、サイエンスオペレーションチームとの協力のもとで立てていく。また並行して、Fermi衛星を用いた星形成領域のガンマ線解析も、精力的に行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、ASTRO-H衛星搭載軟ガンマ線検出器開発のための試験に赴くことが多く、国内の学会などに参加することが難しかったため、予定より旅費が多く余ることとなった。その予算は、研究をしていく上で必要なテキストなどの購入に配分し、最終的な結果、10,000円強の繰越し額が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
10,000円程度の残額のため、その費用に相当する、解析に必要なソフトウェアの購入を考えている。
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