研究課題/領域番号 |
26800164
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
望月 敏光 独立行政法人産業技術総合研究所, 再生可能エネルギー研究センター, 研究員 (30549572)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ホタル生物発光 / 酵素タンパク質 / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
ホタル生物発光基質の誘導体である、5,5-ジメチルオキシルシフェリン(以下発光体と呼ぶ)の、水中および発光タンパク中(以下in-situと表す)の、吸収及び蛍光スペクトルのpH依存性を測定した。 発光体は十分量の発光タンパクにマグネシウムイオンおよびアデノシン一リン酸を適切な量加えることで全量が発光タンパクに取り込まれ、少なくとも数時間の間は安定して光学計測を行うことが出来た。水中でもpH9以下の条件であれば1時間程度は殆ど加水分解されず、測定系の工夫により光学計測を行うことに成功した。 Gaussian09による計算および、水中、有機溶媒中の測定によると、総じて発光体は波長400nm付近で吸収の、500nm付近に発光のピークを持ち、陰イオン化によって両ピークが100nm程度長波長側にシフトすることが分かった。この実験で現れた吸収ピークおよび発光ピークをこの知見と照らし合わせると、pH6から8の範囲では発光体は中性で存在するが、光励起後脱プロトンされて発光していた。 より精度の高い比較では、吸収波長および発光波長は有機塩基を加えたクロロホルム中の値に近く、発光タンパクが作っている環境を解明するために有用な知見が得られた。 本研究で得られた知見のうち、特に水中の光学特性について理論的に考察しまとめ、樋山みやび研究員と共同でPhotochemistry and Photobiology誌での論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加水分解されやすい特性からこれまで系統的な測定が行われてこなかった水中及び発光タンパク質中でのジメチルオキシルシフェリンの光学計測のための技術的課題を解決し、実験手法を確立し、発光体の光学特性の起源に通じる知見を得た。量子化学計算については東大物性研だけでなく産総研側でも環境を整えつつあり、27年度への研究環境が整った。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に沿った形で研究を推進していく。現状得られているデータはpHの範囲などの点で単体で論文発表するにはいくらかデータを追加してく必要があるため、東京大学物性研究所 秋山研での実験を行う。 量子化学計算による考察を深めるため、現在福島再生可能エネルギー研究所内で立ち上げているワークステーションをつくば事業所に設置し、サイトライセンスされているGaussian09を稼動させ、発光体がタンパク中で置かれている状況を更に詳しく知っていくために必要な計算を行う。 ジメチルオキシルシフェリンの特性を調べる実験結果を主とし、生物発光の起源について考察した論文を発表し、別のタンパク質を使った計測やな軟X線分光の実験へと繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
見積競争により予想より安価な調達があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品費として充当を希望する。
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