研究課題/領域番号 |
26800167
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
阿部 伸行 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (70582005)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光吸収 / 方向二色性 / 磁性強誘電体 |
研究実績の概要 |
本研究は光学的電気磁気効果に由来する方向二色性の巨大化への指針を得るために、強磁性強誘電体のボラサイト化合物を対象として、電場および一軸応力によって強誘電分域構造を制御し、光学的電気磁気効果の物質依存性を明らかにすることを目指している。 本年度は強磁場下での測定を効率よく行うため、広い波長範囲を同時に測定できるよう新たに回折格子を導入した。これにより比較的ブロードな吸収ピークを持つボラサイト化合物での測定に適した光学系を構築することができた。 前年度育成したCu3B7O13Clの単結晶試料について光吸収測定を行い、900nm付近にCuのd-d遷移に伴う大きな吸収が観測できた。しかし、吸収が大きいため測定では試料の厚さを20μm程度まで薄くする必要があり、一軸応力による単分域化はまだ達成できていない。室温で結晶学的な分域の制御を行える物質であるため、今後は試料を割ること無く応力印加できるような治具を作成し、結晶学的な分域を揃えた状態を実現することに注力する。 同じく前年度育成したNi3B7O13Iについては、吸収係数の温度依存性測定、線二色性、磁場印加下での吸収係数の温度依存性測定をそれぞれ行い、磁気転移温度以下において方向二色性が現れることを確かめた。 この研究を進める中で、他の類似物質における方向二色性の観測も行った。特にCuB2O4においては発光の方向二色性を観測することができた。これは吸収係数が大きいボラサイト化合物における方向二色性の測定に活かせる知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単結晶試料の育成過程で石英管が爆発してしまい、予定していた組成を全て網羅することが難しくなっている。一方でコバルトやニッケルおよび銅を含むボラサイト化合物の合成には成功しており、特にこれらの物質ではスピン軌道相互作用も大きいため方向二色性も大きくなることが予想される。このため今後はコバルト、ニッケル、および銅を含むボラサイト化合物について、ハロゲン元素を変えた物質の作成を重点的に行う。 また、Cu3B7O13Clにおいては光吸収が大きく、吸収測定のためには試料を20μm程度まで薄くする必要があり、一軸応力の印加が困難であった。今後は試料を割ること無く応力印加できるような治具を作成し、結晶学的な分域を揃えた状態を実現することに注力する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに合成に成功しているコバルトやニッケルおよび銅を含むボラサイト化合物は、スピン軌道相互作用も比較的大きいため、方向二色性も大きくなることが予想される。このため最終年度はコバルト、ニッケル、および銅を含むボラサイト化合物について重点的に研究を行う。また、ボラサイト化合物は光吸収が大きい場合が多く、吸収測定のためには試料を20μm程度まで薄くする必要があり、一軸応力の印加が困難であった。このため試料を割ること無く応力印加できるような治具を作成し、結晶学的な分域を揃えた状態を実現することに注力する。さらに、前年度得られた知見である「発光の方向二色性」をボラサイト化合物の測定にも活用し、吸収が大きい場合でも発光によって方向二色性の測定が可能かどうか検証する。
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