研究課題
本研究の目的は、強相関有機導体に現れる電子系の秩序状態(モット転移や電荷秩序転移)が、スピンや電荷のフラストレーションによりどのように融解して特異なスピン・電荷液体状態が出現するのかを、電荷・格子ダイナミクスの観点から解明するである。特に、三角格子構造をもつ電荷秩序系有機導体θ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4において、物理的圧力効果を用いた格子定数の制御や、電流・電場印加、エックス線照射による格子欠陥の導入など、外部からの変調操作によって、電荷秩序を融解/凍結させて、異なる電荷秩序が競合する電荷グラス相や非フェルミ液体的な振る舞いが期待される電荷液体、さらに電荷揺らぎによる超伝導などの多彩な電子状態の探索とその物理機構の解明することを目的としている。まず本研究では、低温で電荷グラス状態を示す二次元三角格子系有機導体θ-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4において光学伝導度測定を行い、電荷グラス相特有の電荷揺らぎに起因した特異な集団励起が10 meV付近の低エネルギー領域に現れることを見出した。また、本研究では、一次元ダイマーモット絶縁体β'-(BEDT-TTF)2ICl2の圧力下における光学伝導度測定を高輝度放射光施設SPring8にて行い、圧力印加によりダイマー内の電荷揺らぎが増大し、この系で観測される高い転移温度(Tc = 14 K)をもった圧力誘起超伝導に電荷揺らぎが重要であることを明らかにした。
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Physical Review B
巻: 92 ページ: 085149-1-7
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevB.92.085149