スピネル酸化物の中性子散乱と超音波測定の共同研究を進めた。軌道自由度無しのZnFe2O4で、約10 meVにスピン分子励起準位を観測した。弾性定数はこの準位の熱占有が減少する100 K以下で軟化する。軌道自由度を持つMgV2O4で、僅かなMg過剰により磁気秩序を抑制した所、エネルギー構造が準位的ではなくゼロ近傍から30 meV(温度換算で約300 K)以上にも広がるスピン分子的励起を発見した。弾性定数の軟化は少なくとも150 K以下で確認され、スピン励起から推察するに原理的には300 Kでも発現しうる。本結果は、スピン分子が格子と強く結合し、幅広い温度でフォノン物性異常を導くことを示している。
|