研究実績の概要 |
今年度はPb,Biを含むペロブスカイト酸化物の研究を行った。 本研究課題である巨大な正方晶歪みを有する系として、Bi2ZnVO6などの、ABO3で表記されるペロブスカイトにおいて、Bサイトを異なる二つ以上の金属イオンが占有する系を対称とした。SPring-8にて放射光粉末X線回折実験を行い、リートベルト解析を用いて構造相転移を精密に調べた。Bi2ZnVO6はBiCoO3と同様の構造を取るが、BiCoO3が3 GPaで構造相転移するのに対し、6 GPaまで巨大正方晶歪みが安定であることがわかった。両者の違いは、スピン状態転移の影響を伴うか伴わないかの違いを反映しているのではないかと考えている。 今年度は、Pbを含む系において、アニオン複合化物の研究も行った。Pb,Tiを含むPbTiO3は、Pb2+の6s2孤立電子対とTi4+のd0電子配置により、正方晶歪みを有する結晶構造が安定化されると指摘されている。しかしながら、Pb2+とTi4+を含む酸化物としては、PbTiO3とPbTi3O7が報告されるのみである。本研究では、O2-とF-を複合化することにより、新しいPb2+,Ti4+を含む化合物の合成を目指した。物質探索を行った結果、新物質Pb2Ti4O9F2を発見した。この物質はBi2Ti4O11の高温常誘電相と同じ構造であり、Bi3+,Pb2+の6s2孤立電子対によって安定化される、珍しい結晶構造であると言える。さらに精密構造解析を行った結果、O2-とF-が秩序化していることが示唆された。このようにアニオンがオーダーしている系は、固体化学的に、興味深い系であると言える。 今後は本研究をさらに発展させ、巨大正方晶歪みのもたらす分極回転現象などの構造物性を明らかにしていきたい。
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