研究課題
1111型鉄系超伝導体LnFeAsO(Ln=ランタノイド)は低温で常磁性-反強磁性転移を示す。超伝導は電子をドーピングすることで生じ、その超伝導臨界温度(Tc)は鉄系超伝導体中で最も高い値(56K)を示す。初めに申請者はLa系に着目し、電子を高濃度に注入し超伝導が消失した試料において二つ目の常磁性-反強磁性転移(PM-AFM2)を発見した。また、最高Tcを示すSm系においても、サマリウムの同位体置換および中性子回折を用いることでLa系と同様にAFM2相を発見した。さらに第一原理計算から、鉄の3dxy軌道が電子ドーピングによって半充填に近づくことを見出した。これはAFM2の起源が半充填に近づくことによって増加する有効クーロン相互作用に有ることを示している。また輸送特性の評価から、高Tcを示す試料の常伝導状態はAFM2を担う局在スピンの影響を強く受けていることが分かった。これらの結果は、高いTcを持つ超伝導相は半充填した3dxy軌道をフィリング制御することによって生じることを示している。今後、これらの指針をもとに新規高温超伝導材料の開発が期待できる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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