研究実績の概要 |
本年度は以下のような進展が見られた。 (1) Sc5Ir6Sn18がこれまで報告されていたTc = 1.1 Kではなく、Tc = 2.6 Kでの超伝導体であることを見いだすことに成功した。この超伝導体の超伝導状態を調べる際に、よりバックグラウンドの小さな比熱セルが必要となり、サンプルステージを排除し温度計とヒーターのみで構成される比熱セルを開発した。バックグラウンドが0.3 Kで1 nJ/K2程度となり、極めて高い精度で比熱測定が可能となった。またこれらの比熱測定は、絶対値の精度が信頼できる緩和法で測定が可能である。
(2) 海外のグループと共同研究を行い、本研究の対象物質であるR5Rh6Sn18 (R = Sc, Y, Lu)のミュオン測定を行った結果、時間反転対称性の破れが観測された。今後、超伝導対称性を議論する上で重要な情報である。結果の一部はSci. Rep.誌に報告した。
(3) 新たな超伝導体として、TiIrSi (Tc = 1.4 K)、SrPd2Sb2 (Tc = 1.95, 0.6 K)、Y6Tr4Al43 (Tr = Nb, Mo, Ta) (Tc ~ 0.6 K)を発見することに成功した。それぞれ各種物性測定から、通常のBCS理論で説明可能な超伝導であると考えられる。結果の詳細はSupercond. Sci. Tecnol.誌及びJ. Phys. Soc. Jpn誌に報告した。
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