研究課題
新奇トポロジカル絶縁体の物質設計を目標とした遷移金属酸化物の電子状態計算を行った。昨年度に継続してH28年度は酸化物ヘテロ界面のトポロジカル相についての研究を推進した。以前の研究では二層構造をもつ[111]積層BiIrO3を強誘電体BiAlO3で上下に挟んだBiIrO3/BiAlO3ヘテロ構造を理論設計し、強いスピンバレー結合を示すことを明らかにした。今回は同様にBiAuO3/BiAlO3ヘテロ構造を理論設計し、強いスピンバレー結合(スピンとバレーの二つの自由度の結合)及びトポロジカル相を示すことを明らかにした。このようなトポロジカル相はハニカム構造をもつグラフェン類似物質でよくみられる2次元Z2トポロジカル絶縁相であり、BiAuO3のAu-eg軌道がバンド反転を起こすことがその起源である。一方で、BiAlO3は強誘電体であり、その強誘電歪みが加わることでAu-eg軌道のつくる価電子バンドにスピン軌道結合がみられる。結晶構造を変化させ強誘電歪みを増減した 計算を行ったところ、強誘電ひずみがある程度大きくなったところでトポロジカル絶縁相が破れ、トリヴィアル絶縁相に相転移することが分かった。これは、強誘電歪みによって、Au-eg軌道のバンドがスピン分裂した結果、エネルギーギャップが一度閉じることによってバンド反転が引き起こされるためである。今回、空間反転が破れた系でトポロジカル不変量Z2を計算するため、ハイブリッドワニエ関数による新手法を用いた。また、ベリー曲率を計算することにより、光学励起についても議論を行った。その結果、スピンバレー結合とトポロジカル物質を同時に示す興味深い新物質の設計に成功した。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Physical Review B
巻: 95 ページ: 035146-1-7
DOI: 10.1103/PhysRevB.95.035146
Journal of Electronic Materials
巻: - ページ: 1-7
DOI:10.1007/s11664-016-5277-8
Nature Communications
巻: 7 ページ: 13039-1-7
DOI: 10.1038/ncomms13039
固体物理
巻: 51 ページ: 389-396