研究課題
本研究課題では,非磁性基底二重項をもつPrT2Zn20(T=Ir, Rh)において発見した新奇磁場誘起量子相転移の起源解明の為に,電気四極子の感受率である超音波実験などを行う.平成27年度は,PrT2Zn20の磁場方向[110]において,弾性率(C11-C12)/2の磁場依存性測定を28 Tまで(温度は40 mKまで)行った.11 Tまでの測定は現有の超伝導マグネットを用いて行い,28 Tまでの測定は東北大学金属材料研究所 強磁場超伝導材料研究センターとの共同研究で希釈冷凍機付きハイブリッド磁石を用いて行った.その結果,両物質の2 K以下での(C11-C12)/2の磁場依存性は,磁場誘起相転移点で明確な折れ曲がりを示した.我々は,両物質の相転移磁場以下の磁場領域,かつ2 K以下において4f電子の多極子と格子が結合した新規バイブロニック状態を考えており,磁場誘起相転移の起源として磁場による新規バイブロニック状態の破れの可能性を提案している.時計回りと反時計回りの回転が縮重している新規バイブロニック状態を調べることを目的として,超音波実験から回転応答を調べる為に,上記の(C11-C12)/2の測定では回転不変性測定も行った.これは,印可磁場方向を結晶学的に等価な軸([110]と[1-10]),かつ横波超音波の進行方向と変位方向とで別々に測定した結果から得られる.その結果,不変であるはずの両測定で磁場誘起相境界を境に明確な変化が見られ,回転応答に異常が現れることがわかった.このことは,磁場誘起相転移が新規バイブロニック状態の磁場による破れに起因することと矛盾しない.確固たるものにする為に,磁場方向[100],弾性率C44での回転応答の測定を進めるとともに,結果の解析を進めている.この他に,ドイツ国立ドレスデン強磁場研究所でS. Zherlitsyn博士らと実施した共同研究の成果を論文として公表した.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 043601
http://doi.org/10.7566/JPSJ.85.043601
巻: 84 ページ: 124602
http://dx.doi.org/10.7566/JPSJ.84.124602
Physics Procedia
巻: 75 ページ: 166-170
10.1016/j.phpro.2015.12.022
巻: 75 ページ: 443-446
10.1016/j.phpro.2015.12.054
巻: 75 ページ: 187-191
10.1016/j.phpro.2015.12.024
巻: 75 ページ: 516-521
10.1016/j.phpro.2015.12.065
J. Phys.: Conf. Proc.
巻: 592 ページ: 012018
http://dx.doi.org/10.1088/1742-6596/592/1/012018
http://home.hiroshima-u.ac.jp/ltlab/