研究課題/領域番号 |
26800191
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
安齋 太陽 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90609736)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 重い電子系 / 角度分解光電子分光 |
研究実績の概要 |
希土類化合物における近藤効果や RKKY 相互作用などの物理現象は、局在 4f 電子と伝導電子の多体相互作用 (c-f 混成) を起源としている。そのため、c-f 混成の強さを定量的に評価することが現象を理解する重要な鍵となる。本研究では、放射光を用いた角度分解光電子分光により混成バンドとフェルミ面を精密に観測し、それらの形状から準粒子質量と混成エネルギーを直接的に評価する。電子の状態という微視的な情報から、c-f 混成に由来する物理現象を理解することを目的としている。 平成 26 年度は、温度により二段階に価数が転移する EuPtP のフェルミ準位近傍の電子状態を観測した。角度分解光電子分光実験は、広島大学放射光科学研究センターの BL-9A にて行った。0.1 mm × 0.5 mm ほどの微小な試料であったが、真空中にて平坦性のある劈開面を得ることができ、世界に先駆けて EuPtP のバンド分散を観測することに成功した。 放射光の偏光特性を活用して奇対称の電子軌道を選択的に観測した結果、α 相 (260 K) では Pt 5d に由来する二つのホール・バンドが Γ 点周辺と K 点周辺にそれぞれ観測された。β 相 (220 K) に転移すると、α 相にて観測されていたバンドが高結合エネルギー側に 0.2 eV ほど移動し、その結果としてフェルミ面の面積が小さくなることが判明した。フェルミ面の面積の縮小は、フェルミ準位上における伝導電子数の減少を示唆しており、β 相にて報告されている電気抵抗率の急激な増加に矛盾しない結果となる。 また γ 相 (140 K) にて、Eu 4f 軌道と Pt 5d 軌道が c-f 混成することで形成されるギャップ構造を観測することに成功した。周期的アンダーソンモデルを仮定したフィッティング解析により、当該物質の混成エネルギーを 0.1 eV と評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成 26 年度に計画した EuPtP の実験は当初の予定通りに行い、混成ギャップの存在を示す実験結果を得ることに成功している。また、平成 27 年度の後期から始める予定でいた希土類化合物 YbInCu4 の実験は、予定を前倒しして平成 26 年度に開始した。以上のことから、研究は順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成 27 年度は、希土類化合物 EuPtP の再現性を確認するとともに、偶対称の電子軌道を選択的に観測し、EuPtP のフェルミ面形状および混成ギャップに関する結果を早急にとりまとめる。また、YbNiX3 (X = Si, Ge) における角度分解光電子分光実験を行い、バンド分散およびフェルミ面を観測することで c-f 混成を起源とする近藤効果と RKKY 相互作用の競合に関する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
超高真空用の試料設置ホルダーの設計の見直しを行い、単価を抑制した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は出張実験の際の旅費や、試料設置ホルダーなどの消耗品の購入に充当する。
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