研究課題
希土類化合物にて観測される近藤効果や RKKY 相互作用、価数相転移などの多彩な物理現象は、伝導電子と局在 4f 電子の多体相互作用 (c-f 混成) を起源として発現する。本研究では、放射光を用いた角度分解光電子分光実験から固体内の電子状態 (バンド分散) を直接的に観測し、バンド分散の形状から c-f 混成の強さを定量的に評価することを目的とした。本年度は、Eu の価数が温度により変化する EuNi2P2 に注目して研究を進めた。これまでの研究から、当該物質のフェルミ準位近傍の電子構造は、複数のバンドで構成されることが知られていた。しかし、フェルミ面の形状や電子軌道の詳細は明らかにされていない。価数が転移する現象を理解するうえで、フェルミ面を構成する電子軌道を特定することは重要となる。本研究では、放射光の偏光特性を利用してバンドの偶対称成分と奇対称成分を分離して観測した。その結果、ブリルアンゾーンの X 点の周りに円形のフェルミ面が作られ、そのバンドは Ni 3dxy 軌道および 3dyz 軌道に由来することが判明した。Ni 3d バンドの光電子強度を定量的に評価したところ、Eu の平均価数の温度依存性に一致した。これは、Eu2+ と Eu3+ の間の電荷移動が伝導電子となる Ni 3d 軌道を介して行われることを示している。当該物質の価数転移現象に、局在 4f 電子と伝導電子の混成効果が関係していることが示唆される。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Physica Status Solidi C
巻: - ページ: -
DOI:10.1002/pssc.201600185
Journal of Physics: Conference Series
巻: 807 ページ: 012006-012011
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Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena
DOI:10.1016/j.elspec.2016.12.009