研究課題/領域番号 |
26800192
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
ホタン ヒュイ 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40714382)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SQUID顕微鏡 / ピン止め / 電子ビームリソグラフィー |
研究実績の概要 |
DCスパッタリング装置(日本シード研究所製)による磁束量子ピン止めの弱いMo80Ge20膜の成膜を行った。微細加工は電子ビーム描画装置(エリオニクス製)を用いて行った。研究協力者(石田武和教授)の協力を得て、特に基板の冷却機構を充実させるためにチラーの冷却水を循環させる冷却機構の整備を行った。また、基板を銀ペーストにより灼熱板に密着させる手法も併用し、その効果を試し冷却が有効であることが分かった。そのために、X線回析装置(リガク製)で詳細に解析した。MoGe膜にピン止め中心を導入する手法としては、電子ビームで局所的に加熱して金属Mo微粒子を析出させる手法とイオンミリング装置をつかいピン止め中心を作るためのレジストパターンを作り、Arミリングで試料作りをした。この際、大学院生(岡本拓人氏、松本仁志氏)、学部学生(三吉大樹氏)の協力を得た。 電子ビーム描画で作製した試料では、積極的なピン止め中心の役割の証拠は認められなかったが、継続して取り組むことが必要である。イオンミリングで明確な微細孔を作製し、磁束像を調べたところピン止め中心として機能することが分かった。 そのために、走査型SQUID顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製)を使い、磁束分布の観測を開始して、明瞭な画像を取得することができはじめた。 理論計算については、研究協力者(加藤勝准教授)の協力を得て、Ginzburg-Landau理論による計算プログラムの開発に取りかかった。 初年度としては、十分な準備ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mo80Ge20薄膜の作成方法が確立させることができた。また、X線回折装置で膜質がアモルファスであることを確かめることができたなどの明確な前進があったためである。また、Mo80Ge20星形試料の微細加工にも成功して、SQUID顕微鏡による磁束分布の測定にも成功した。理論計算についても、Ginzburg-Landau理論による計算を開始することができた。 これらの理由から順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27度以降も、磁束量子ピン止め中心を有する極めて小さな超伝導ナノ構造アモルファスMo80Ge20薄膜構造体の開発を継続する。そして、その微細加工で作成した微小試料を用いて、磁束量子の特異な振る舞いに関して、SQUID顕微鏡を用いた観測実験とGinzburg-Landau理論による計算から調べる手法を比較する研究を継続する。任意の位置にピン止め中心を導入する方法として、電子ビーム描画装置によるレジストパターンの作製とイオンミリング装置によるドライエッチングを組み合わせる方法で開発を進める。 また、電子専用の塗布フォトレジストに対して電子線描画する代わりに、直接Mo80Ge20薄膜に電子線を照射する方法も試す。これにより超伝導コヒーレンスξ程度、あるいは、その数倍程度の大きさの金属Mo微粒子を析出させることが出来る。また、電子ビームによる微細加工時のマーカーを使うことで、正確にターゲットのなる位置に電子ビームを当てることが出来るEB装置の最高性能を活かせるメリットは計り知れない。照射量は電子の総電荷(クーロン数)で管理ができる。この開発の重要性は世界の研究者に共同研究などの可能性があり、新たな研究方法を周知することで共同研究が進展すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、当初計画していたのとは異なり、旅費としてベトナムと日本の往復旅費が1回分のみの計上で良いことになった。そのため、計画では二回計上していたが、その分を平成27年度の旅費や消耗品に計上する方が研究の進展に有効であることが分かった。そのため、平成26年度の予算を一部、平成27年度で執行できるように執行計画を見直した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に未執行となった予算は、平成27年度に旅費や消耗品として執行する計画に変更する。これにより、本研究の進展が更にうまく行くと考えている。
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