研究課題/領域番号 |
26800192
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
ホタン ヒュイ 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40714382)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | SQUID顕微鏡 / ピン止め / 電子ビームリソグラフィー / SQUID素子 / GL計算 |
研究実績の概要 |
研究の目的:ナノ構造超伝導体の磁束状態の研究で、非常にピン止め効果の弱いMoGe試料を作製して、電子ビーム描画装置の超高精度で電子ビームでメゾサイズの局所領域を加熱して、メゾサイズの金属Mo微粒子を析出させ、ピン止め中心として機能させる。 本研究では、Mo80Ge20アモルファス膜の研究を(1)ピン止め効果の極めて弱いMo80Ge20膜の開発、(2)Mo80Ge20膜質と上部臨界磁場Hc2との関係、(3)Mo80Ge20膜に電子ビーム加熱で金属Moメゾ結晶を析出させて人工的に規則正しくピン止め中心を導入、(4)Mo80Ge20膜の磁束量子配置をSQUID顕微鏡で実測、(5)Ginzburg-Landau理論を用いてMo80Ge20膜の磁束配置の理論計算を実施して実験と比較、(6)正5角形を使い理論と実験の両方からMo80Ge20膜における磁束量子の準結晶を探索する。 平成28年度の研究実績:超伝導Mo80Ge20有限サイズ系としてパックマン型微小板をスパッタリングと電子ビーム描画装置で作成し、新規な磁束状態と充填の規則を求めた。SQUID顕微鏡による磁束像の直接観測を系統的に行った。また、理論によって期待される磁束分布を求めるためにGinzburg-Landau理論による計算を行った。本年度の形状は空間的な非対称の導入による磁束分布の特異性を高めることにあった。実際、円状の微小板、正三角形、正四角形と比較すると大きな違いが見られることが分かった。 SQUID顕微鏡の感度を高めるために、独自に製作したSQUID素子で鮮明な磁束量子の観測に初めて成功した。SQUID顕微鏡の改造に着手したが進捗状況に記載した理由で完成には至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初平成26年度~28年度の研究期間として、SQUID素子の製作と評価が大きく進展するなど研究の進展があった。最終年度の平成28年度に利用したい装置の改造を11月頃から担当する業者と打合せを開始していた。ところが、担当する業者の年度内の受注数が多く、年度内に本研究への対応が困難になった。そのため装置の納入時期を平成29年度とする計画の変更が避けられなくなったため、やや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究実施計画: 平成28年度に実施した研究のとりまとめを行う。特に、パックマン型超伝導微小板に関しては実験的研究と理論的研究を系統的に行っていることからとりまとめに着手する。また、理論的な磁束状態と実験で得られる磁束状態の比較で問題になるのは、どちらの手法も真に安定に存在する状態が得られている保証がないと言える。特に、理論計算で安定に存在ができる条件や分布の統計を調べる。また、実験的には、よりぴん止めの弱い試料を作製して磁束分布の観測を行う。 研究書で考案した電子ビームの集中的照射でピン止め中心を作る手法よりも、イオンミリング装置でわずかな微小な円上のディップを作ることの方が有効と分かっている。 その視点からパックマン状の微小板にピニング中心を導入する。 また、SQUID素子の開発に成功したことから、S/N比の良い素子を用意して、鮮明な磁束像の開発を目指す。そのためには冷凍機の改造に着手して、SQUID顕微鏡として用いることができるかどうかの検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究をさらに発展させるための装置の改造について2016年11月頃から依頼を開始していたが、担当する業者が2016年度内納期での受注件数が多くなり、本研究に依頼が年度内に対応することが困難になった。そのため、装置の納入時期を次年度とする計画の変更が避けられなくなりました。また、業者とその変更に関する打合せを行った。
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度に打合せをした業者と相談をして、冷凍機に改造計画を立案する。具体的な見積額などは年度当初には間に合わないが、計画を詰めてから私用計画を立てる。 また、研究成果の発表を積極的に行うための経費として支出する。
|