研究課題
超伝導や巨大磁気抵抗効果などの数々の特異な物性がd電子系遷移金属化合物の金属-絶縁体転移近傍で発見され、強相関物性の研究が発展した。一方、強相関f電子希土類化合物での金属-絶縁体転移の研究はサマリウム(Sm)化合物絶縁体を中心に研究が行われている。しかし、実験技術的な問題のため、全容の解明に不可欠であるミクロレベルでの測定はあまりなされていない。本研究ではこうした問題を克服しSmS、SmB6の圧力下核磁気共鳴(NMR)実験を遂行することで、電子の局在-遍歴に由来する物性現象の解明につなげることを目的とした。SのNMR実験可能な濃縮同位体を用いた試料を作製することでSmSのNMR測定に初めて成功した.絶縁体―金属転移は約1 GPaの圧力で起こる.本研究の成果は[絶縁体相] Smイオンが2価状態をとり、非磁性絶縁体あることをミクロレベルで検証した.また,核スピンー格子緩和率(T1)測定より650 K程度のギャップが検出された.[金属相] この相では(1) Smイオンの4f電子の局在/遍歴性,(2) 圧力誘起磁気秩序の磁気構造,(3) ギャップの存在,に着目して研究を進めた.それぞれに関して得られた知見は(1)T1の温度依存性より少なくとも50 K以上の温度領域4f電子は局在している.(2) 2 GPaより高圧でNMRスペクトルが15 K以下で磁気秩序による内部磁場の発生と考えられる形状の変化を示した.また,スペクトルの共鳴周波数から反強磁性秩序の可能性が高い.(3)すべての圧力において低温(高圧ほど減少し始める温度が低い)で1/T1の急激な減少を観測した.これはギャップの存在を決定的にするものである.SmB6については6 GPaまでNMR測定を行い,ギャップ付近のバンド構造が変化している可能性を指摘した.
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 683 ページ: 012027 1-4
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Journal of Physical Society of Japan
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