研究課題/領域番号 |
26800197
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
永井 佑紀 独立行政法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究員 (20587026)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチバンド超伝導 / トポロジカル超伝導 |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、当初の計画通り、マルチバンド超伝導体に対する有効理論の構築とマルチバンド超伝導体のマルチバンド性に関する研究を行った。具体的には、準古典Eilenberger理論のマルチバンド超伝導体への拡張の前段階として、マルチバンドBogoliubov-de Gennes方程式を出発点とした低エネルギー有効理論の構築を行い、その理論とトポロジカル超伝導体候補物質CuxBi2Seに適用した。その結果、軌道とスピンの計4自由度を持つこの物質のトポロジカル超伝導を、2自由度のみを持つスピントリプレット超伝導にマップする事ができた。マップされたスピントリプレット超伝導の理論を用いる事で、超伝導磁束回りの電子状態の準古典グリーン関数の近似的解析解を構成し、磁束回りの局所状態密度分布のエネルギー依存性を計算した他、特定のトポロジカル超伝導は面内磁場回転比熱・熱伝導率測定で検出する事が可能であることを示した。 また、研究実施計画で述べたように、トポロジカル超伝導とスピントリプレット超伝導の類似性から、トポロジカル超伝導もスピントリプレット超伝導と同様に非磁性不純物に弱いと素朴には予想されるにも関わらず、実験がdirtyであると報告されている問題があった。この問題に対して、トポロジカル超伝導体CuxBi2Se3の不純物効果を理論的に調べた。その結果、母物質の絶縁体ギャップすなわち質量とフェルミ波数の比betaが非磁性不純物効果を支配することを明らかにした。質量が小さい場合有効模型は相対論的ディラック方程式となり、この場合はトポロジカル超伝導体は相対論的s波状態とみなす事ができ不純物に強いが、質量が大きい時非相対論的方程式になりp波超伝導体にマップされる。そのため、ドーピング等によるbetaの変化が不純物耐性を決めていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、マルチバンド超伝導体に対する次元縮約有効理論の構築が目的である。本年度では、主にトポロジカル超伝導体に対して低エネルギー有効理論の導出を行い、実際の物理量を計算し、超伝導対称性の同定法の提案を行った。理論の構築としては、マルチバンドBogoliubov-de Gennes方程式を出発点として低エネルギー有効理論の構築法を開発した他、その理論を実際にトポロジカル超伝導体に適用することで多くの成果を得た。また、トポロジカル超伝導体の非磁性不純物耐性をコントロールするパラメータを見いだした事は予想以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の計画において、マルチバンド超伝導体に対する次元縮約有効理論における一般的境界条件の導出を行う予定であったが、具体例を蓄積を通じて、境界条件の問題はシングルバンド系にはない多彩な側面を持つ事が明らかになった。その為、平成27年度にはこれらの成果をまとめることを目的とする。また、「マルチバンド性」を有効的な「擬ポテンシャル」とみなす際、この擬ポテンシャルが境界条件にどう影響を与えるかを調べる事によって、トポロジカル超伝導体をはじめとする境界に束縛状態を持つマルチバンド超伝導体の挙動を特徴づけることを試みる。また、具体例蓄積としてトポロジカル超伝導体と鉄系超伝導体に着目し、マルチバンド超伝導体の不純物効果の次元縮約理論による定式化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年3月の米国出張旅費が平成27年4月の支払となるため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年4月に平成27年3月の米国出張旅費として支払が行われる。
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