研究課題
平成28年度においては、マルチバンド超伝導体に対する有効理論の構築が完了し、その手法の詳細を記した論文の執筆を行った。当初の予定どおり、次元縮約有効理論を用いることでマルチバンド超伝導体に対する準古典Eilenberger理論を完成させることができた。そして、様々なマルチバンド超伝導体にその理論を適用することにより、マルチバンド準古典Eilenberger理論の有効性を示すことができた。研究期間全体を通じて実施した成果としては、当初の予定どおり、次元縮約有効理論がマルチバンド準古典Eilenberger理論を作る上であることを示し、マルチバンド超伝導体を簡便に理論的に扱う手法を確立したのが主要な成果である。また、マルチバンド準古典Eilenberger理論の構築を通じて、トポロジカル絶縁体に電子ドープをして超伝導となるトポロジカル超伝導体候補物質CuxBi2Se3の有効理論を構築することができた。その結果、母物質の質量ギャップの大小によって、準古典Eilenberger理論が適用可能な領域とそうでない領域が存在することを明らかにした。そして、その大小によって、超伝導の性質が大きく変わることがわかった。質量ギャップが大きい時は、p波超伝導体に、小さい時はs波超伝導体になり、不純物効果や核磁気緩和率などが大きく変化することを明らかにした。これは、この物質の電子状態がその強いスピン軌道相互作用によって相対論的Dirac方程式に従うためである。このような、通常の準古典EIlenberger理論では扱えないようなマルチバンド超伝導体を扱えるようになったことが、本研究の成果である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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