研究課題/領域番号 |
26800202
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
曽我 之泰 金沢大学, 数物科学系, 助教 (90525148)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 流体物理 / 非中性プラズマ / m点爆発 / オイラー流体 |
研究実績の概要 |
2次元オイラー流体中の渦塊群が自発的になす秩序立った準平衡分布の形成・崩壊機構の解明を本研究の最終目標とし,電子のみからなる非中性プラズマを用いた実験検証を目指している。円筒容器内に強磁場で閉じ込められた電子群の断面内の運動が,2次元オイラー流体の運動と等価であることを利用し,様々な渦の初期配置からの時間発展を追跡することで,オイラー流体の自発的な構造形成のダイナミクスを実験的に検証する予定である。しかし,実験に特有な非理想的な効果により,オイラー流体との等価性が成り立たなくなる現象が指摘されてきた。この等価性の限界に関する渦糸群の運動を対象とした検討は未だなされていない。 今回,2本の紐状の電子群を円筒容器に閉じ込めそのダイナミクスを追跡し,その軌道をオイラー流体の理論の予測と比較し,非中性プラズマの2次元運動と2次元オイラー流体の運動との等価性が成立しなくなるパラメータ領域を実験的に検証した。その結果,閉じ込め領域の両端付近の外部電場が渦糸群に誘起する速度場が,オイラー流体理論の予測とのずれを生む原因であることを突き止めた。 数学分野で研究が進んでいる2次元平均場方程式の平衡解として知られるm点爆発解については,電磁気学的な検討を計算機によって行った。その結果,アニュラス領域では数学の予測と一致する不安定な平衡解が存在することを確認した。オイラー流体との等価性が成り立つパラメータ領域に注意し,m点爆発解についての実験検証に移行するよていである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の成果は非中性プラズマ国際ワークショップで発表済みであり,順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
装置の閉じ込め領域に接地した導体筒を設置し,2重同軸円筒境界の渦実験専用に改造する。この境界条件の下で渦塊群の自発的な構造形成が観測された場合,温度測定の結果からm点爆発解と渦塊数の関係を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では,多粒子軌道計算に用いる計算機製作費用として,最上位のグラフィックボードの価格を計上していた。しかし実際に交付された額では購入できなくなったため,グラフィックボードの性能を入門者用に落として製作した。そのため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
計算機のスペックの低下をカバーするため,より実験サイドに重点をおいて研究を推進する必要がある。国際ワークショップでの情報収集の結果,電子プラズマのより良い閉じ込めの為には,電極の表面粗さを極力減らす必要がある事が判った。この情報に基づき,電極の表面を金メッキ処理する行程を最終年度の装置改造計画に加えることにした。次年度使用額をこれにかかる費用にあてる予定である。
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