2次元オイラー流体中の渦塊群が自発的になす秩序だった準平衡分布の形成・崩壊機構の解明を目指し,電子のみからなる非中性プラズマを用いた実験検証及び,数学分野で発展してきた2次元オイラー方程式の平均場平衡解として知られるm点爆発解の物理的解釈を行った。まず,少数の渦糸とみなせる電子群の運動を実験的に追跡し,流体理論による予測と比較した。位相空間による渦糸群の軌道を解析した結果,電子渦糸を閉じ込める為に印加する外部ポテンシャルが,電子渦糸の2次元運動と2次元オイラー流体の等価性を破る原因となることを突き止めた。この非理想的な効果は,外部ポテンシャル分布をパラボリック形状に設定する事で緩和できることを示した。 次に,二重連結領域内で電子渦糸群が作る電位分布を数値計算により検討した結果,5本までの渦糸群に対して,方位角方向に等間隔で分布する不安定な静的解が存在する事が判った。これは,オイラー方程式のm点爆発解に対応していると考えられる。統計力学的による解釈を援用すると,二重連結領域における点渦の状態数分布が,系のエネルギーに対してガウス分布に従う事が示唆された。数値計算による予測を実験的に検証するため,二重領域の境界条件で電子渦糸群を閉じ込める電極を設計・製作した。現在,装置の予期できない不具合により実験検証が遅れているが,計算による予測に基づき,m点爆発解に対応する電子渦糸群の生成実験を引き続き進める予定である。
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