研究課題/領域番号 |
26800206
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
門内 隆明 成蹊大学, 理工学部, 講師 (30514476)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非平衡統計力学 / 孤立量子系 / 非平衡定常状態 |
研究実績の概要 |
本年度は、非平衡統計力学の構築を目指して、孤立量子系における典型的純粋状態が内包する熱的な性質に関連した研究を行った。一連の研究によって、孤立量子系の熱的性質を非平衡過程に適用することが可能になり、非平衡統計力学と量子情報・冷却原子気体をはじめとする他分野との関連についての理解も進みつつある。
先行研究において、一個の純粋状態は確率概念であり、少数個の物理量に限定することで熱平衡アンサンブルとわずかな相対誤差を除いて同じ期待値を与えることが知られている。熱平衡状態では、局所物理量の和を扱うことが多いので、物理量の限定は実際上問題になることは少ない。一方、非平衡過程では、物理量の高次揺らぎが重要な役割を果たすと考えられる。そこで本研究では、熱平衡状態から出発する非平衡過程一般について、エントロピー生成をはじめとする物理量の分布関数も単一の純粋状態から再現できることを理論的に考察し、数値的検証を行った。理論的解析は、分布関数がヒルベルト空間の次元と同数の線形独立な物理量の情報を含んでいることに基づいている。 また、相互作用する2つの熱浴系について、非平衡定常状態を表現するほぼすべての純粋状態を散乱理論に基づいて構成した。具体例としてメゾ系における電子輸送を扱い、非平衡アンサンブルによるカレントの期待値を2次摂動で再現した。 これらは、粒子数カレントや近年重要視されている微小系において稀に起こる大きな非平衡揺らぎまで含めて、単一サンプルによって解析できる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一連の研究によって、非平衡統計力学の構築という当初の目標を遂行しつつ、量子情報・冷却原子気体をはじめとする他分野との境界領域の開拓も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
孤立量子系については、本年度の成果から派生した問題や関連したテーマについて、共同研究を継続する。 また、非平衡統計力学の構築について、国際会議やシンポジウム等での議論・共同研究案を踏まえて進める。
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