研究課題
本課題は常微分方程式や差分方程式で表現される摂動力学系の解析手法として開発されてきた近似法である「系のLie対称性を利用した近似法」について,その適用対象を偏微分方程式や汎関数で表現される系にまで拡張することである.前年度からの研究継続の結果,偏微分方程式で表現される特異摂動問題に関して,解の漸近挙動を支配する漸近的力学系を導出する系統的な方法を開発し,発表することができた.偏微分方程式を対象とする際には,考察対象となっている微分方程式に加えて,無摂動解を一つ固定することから定まる微分方程式を新たに拘束条件として加え,それらの微分方程式系を不変にするような変換群にともなうLie方程式が,漸近挙動を記述する力学的方程式となることを示した.偏微分方程式では変数の増加に伴い適切な対称性が存在しない場合が多いが,拘束条件の追加によって微分方程式系がなす多様体の次元を落とすことができ,漸近挙動を記述する力学系方程式を導出することができる.本年度の後半には,さらにその発展として,汎関数系に対して,対称性を利用した近似法の確立を試みた.現在のところまだ系統的な方法の確立には至っていないが,研究の過程において,汎関数系を考察対象とする際にも,偏微分方程式系と同様に何らかの拘束条件を加えることによって,力学系のなす空間の次元を落とし,その制限された空間において対称性を見出す必要があることが判ってきた.上記と並行し,この方法論の現実系への適用対象として有力な候補である,走化性振動子集団の運動を解析に取り組み,その結果について発表を行った.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Journal of Applied Mathematics
巻: 2015 ページ: 601657 (8pp)
10.1155/2015/601657