オプトメカニクスの実験系では昨年度室温である300Kからのレーザー冷却を行ったが、到達温度のさらなる低下のためにクライオスタット内でのオプトメカニクス系の構築を行った。振動が伴うクライオスタット内での共振器へのレーザーの周波数ロックが大きな問題となった。最終的に共振器全体をばねによりクライオスタット内に吊るすことで振動による影響を緩和できた。クライオスタット内のオプトメカニクスを用いて振動子と共振器内のコヒーレント操作であるOptomechanically induced transparencyの信号を測定することに成功した。エレクトロメカニクスでは昨年度マイクロ波共振器と振動モードの強結合を確認し、基底状態までの冷却を達成した。同じ実験系を用いて異なる振動モード間の強結合を確認した。一つの薄膜振動子の二つの異なる振動モードを結合している共通のマイクロ波共振器を媒介して結合させることに成功した。また同様のサンプルを用いて超伝導量子ビットとエレクトロメカニクス系の結合が観測されたが、サンプルの破損後再現性に乏しく定量的な測定が行えていないが、超伝導量子ビットを用いた振動子の量子状態生成に着手できた。 今年度新たな方向性として進めたのが、表面弾性波(SAW)の電磁波を用いた操作である。振動周波数の高いSAWでは薄膜振動子に比べ冷却条件などが緩和され量子操作に有利だと考えた。希釈冷凍機を用いたSAW共振器の作成では106という非常に高い振動子Q値が観測された。またオプトメカニクスの方ではSAWを一点に集中させるSAW Focusing技術の開拓、またSAWの基板上での分布を測定するレーザー干渉計を用いたSAWの可視化にも成功した。
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