光子検出を利用した伝令の手法により、単一光子状態は高純度に生成可能である。しかし、この手法は量子力学的な重ね合わせ状態からの測定による射影を利用しているため、その生成タイミングは本質的にランダムとなる。そのため、生成した単一光子状態を高純度のまま保存する量子メモリーが応用上重要となる。我々の先行研究において、連結共振器のスイッチングを利用して量子メモリーが実現でき、それを用いると単一光子状態を高純度のまま保存し、タイミングを制御して放出できることが示されている。この手法を用いて、生成タイミングが一般には異なる二つの単一光子を同期して放出し、干渉させることが本研究の目的である。量子メモリーによる光子の同期および干渉は、光子を利用した量子情報処理や量子中継などの基礎となり得る基本技術である。初年度で二光子干渉のファーストデータを取るところまで研究を進めることができた。今年度はその再現性を確かめつつ、実験パラメータを変えてその依存性を確認した。特に、量子メモリーでの最大保存時間は重要なパラメータである。量子メモリー内での光学的ロスはゼロではないため、保持時間中は保持された量子状態の純度が少しずつ劣化していく。量子状態に必要な純度から、可能な最大保持時間が求まることになる。量子状態を表すウィグナー関数に負領域が存在することが、高い量子性を保持していることの重要な証拠であることから、それを条件に二光子の同期のための最大保持時間を実験的に求めた結果、1マイクロ秒程度の保持が可能であることが分かった。以上の結果を学術論文としてまとめた。また、実験を次のステップに進めるために、量子メモリーに位相プローブを組み込むことが重要であると考えているため、現在はそのための準備として基礎技術の開発を行っている。
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