研究課題
水素と1 %程度のベンゼン(C6H6)、シクロヘキサン(C6H12)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)の4種類の気体を混合した気体試料について、ミュオンを照射したときに得られた特性X線スペクトルを詳細に解析した。これらの実験データは低圧の、ミュオン原子が形成後に孤立系とみなせる理想的な条件でのものであり、ミュオンの転移過程について先行研究に比べて高い精度の実験データを得ることができる。本研究における具体的な成果として、COとCO2のミュオン転移現象の詳細な比較を挙げることができる。ミュオン原子が直接捕獲される過程においては、この化合物間でミュオンの捕獲率に30%もの違いが見られていたが、本研究で扱うミュオン転移過程によるミュオン原子形成過程においては、化学的な影響ほとんど見られず、転移現象が化学構造の影響を受けていないことがわかった。これは転移現象ではミュオンが相互作用する電子が内殻に存在することを意味している。また、本研究ではこれまで得られたミュオン原子形成過程の研究成果を基として、応用研究としてミュオン特性X線による元素分析手法の開発にも取り組み、成果をあげることができた。なお今年度は前期および後期で4回、計8日のマシンタイムの実施の予定があったが、実験を実施予定であった茨城県東海村J-PARC加速器実験施設がトラブルのため、ミュオンの照射実験の実施ができなかった。このため交付申請書に述べていたような、COS, C4H4O, C4H8Oといった分子に対するミュオン転移現象の研究は、十分な準備状況にあったものの実施することができなかった。H27年度の成果は、10件の学会発表(うち5件は国際シンポジウム、またそのうち1件は国際シンポジウムでの招待講演、国内学会のうち1件は依頼講演)と、6件の査読付き論文誌論文誌での発表(5件発行済、1件はin. Press.)として公表した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry
巻: - ページ: -
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