研究課題/領域番号 |
26800214
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
菜嶋 茂喜 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (90347485)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 外部共振器 / エンハンスメント効果 / 高繰り返し周期フェムト秒レーザー |
研究実績の概要 |
本研究は,レーザー励起発生型のテラヘルツ波(THz波)に対し,励起レーザーの繰り返し周期に合わせたテラヘルツ波の共振器を用いて,エンハンスメント共振させてTHz波を増大させる手法の確立を目指している.それに対し2年目となる今年度は,1年目に作製した1GHz程度の繰り返し周期のTHz波用の外部共振器を作製して,隣接するTHz波パルス列間の重ね合わせを実行し,可干渉性やジッターの影響などについて調査した. THz波用の外部共振器は,ワイヤーグリッド(WG)と2枚の金属ミラーで構成し,WGは結合器として用いた.それらの光学素子を用いて,共振器長が可変で1GHzの繰り返し周期に相当する30cm程度のリング型共振器を作製した.この共振器をTHz波の伝搬経路に挿入し,共振器を経由しないTHz波と共振器を経由したTHz波を重ね合わせることで,THz波パルス列間の可干渉性を調べた.その結果,両経路を経由した2つのTHz波パルス波形をテラヘルツ時間領域分光法で確認することに成功した.この結果は,隣接するTHz波パルスを同じ遅延時間上で確認したことを意味している.両経路のTHz波パルスはほぼ同一の波形をしていた.このことにより,大気中の伝搬での分散の影響が極めて小さいことと,繰り返し周期のジッターの影響が殆ど見られないことを確認した.また,外部共振器長を変えることで,他方の測定される遅延時間の位置を変えることにより,THz波パルス間の重ね合わせ状態を時間領域で確認し,可干渉性を確認することができた.さらに,外部共振器を2周回,3周回したTHz波を確認することにも成功し,外部共振器を用いてTHz波のエンハンスメント共振が実現可能であることを実証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究テーマ遂行にとって必要とされるテラヘルツ波のパルス列間の可干渉性とジッターの影響についての調査を完了し,共振器設計へと移行できていることから,おおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の段階で,レーザーの繰り返し周期に同期したテラヘルツ波パルス列のジッター評価やテラヘルツ波パルス間の可干渉性についての定量的な見解を得ることができた.この結果を基に,ファブリーペロー型共振器などの比較的アプローチし易い共振器構造を採用して共振器設計し,実践でエンハンスメント効果を実証していきたい.その一方で高フィネス型の共振器についての準備を進め,目標とする増大効果を目指していくことを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
レーザー共振器の改良で予定していたが,現状の出力特性で予定していた実験課題を遂行することができた.次年度には設計しているテラヘルツ波用の共振器など高額な使用が予想される為,次年度に繰り越すことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
設計しているテラヘルツ波用の共振器に必要な光学部品やレーザー共振器の改良に必要な光学部品を購入する予定である.また,国際会議などでの研究成果発表や論文投稿料などへの使用も予定している.
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