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2014 年度 実施状況報告書

生体膜モデル表面の階層構造と元素特異的な密度分布の精密計測法の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 26800223
研究機関京都大学

研究代表者

山本 暁久  京都大学, 物質‐細胞統合システム拠点, 研究員 (90706805)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードX線反射率 / 微小角X線蛍光散乱 / ラングミュア膜 / 静電相互作用 / モデル生体膜 / リポポリマー / 酸化脂質 / 糖脂質
研究実績の概要

本申請では、膜タンパク・イオンとの相互作用を支配している静電相互作用を記述するため、微小角X散乱蛍光法(GIXF)とX線鏡面反射(XRR)を組み合わせた実験を行った。
合成リポポリマーの気液界面単分子膜系においては、親水基の双生イオンであるPC基と水相イオンの相互作用をX線蛍光で直接測定した。膜近傍においてナトリウムイオンあるいはカリウムイオンとカルシウムイオンの局在の競合について調べ、これまでの一般的な分光法では不可能であった一価・二価のイオンの空間分布を測定した。また、疎水基‐親水基のバランスが異なる分子について実験を行い、分子構造がもたらす膜厚・ラフネス・電荷密度の差異をX線反射率測定から見出した。現在これらの結果を、より定量的な理解に向けて解析している。
過酸化脂質の気液界面単分子膜とCRPタンパク質の相互作用に関しても同様の手法で実験を行った。膜下水相に注入したタンパク質が脂質単分子膜と相互作用することによる、膜構造及びその直下のイオン分布の変化を見出した。構造の異なる2つの酸化脂質(PazePC、PoxnoPC)についても実験を行ったので、今後これらの比較を含め解析を行う予定である。
また、糖脂質Gb3については、関連して中性子非鏡面散乱法を用いた力学パラメーターの決定に関する内容をフルペーパーとしてまとめ、JCP誌に掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、実験をフランスグルノーブルの放射光施設ESRFで限られた時間しか行うことが出来ないにもかかわらず、多くの興味深いデータを得ることに成功した。一方で、これらの結果の解析に当たっては実験サンプルごとに適切な追加実験を行い、それらを組み合わせることで膜厚やラフネス等のパラメーターを現実的な範囲で決定することが望ましい。リポポリマーに関しては合成分子の分子量測定等に多少困難があったものの、ほぼすべての系で現在までに解析が始められる状態になっているため、おおむねに順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後は、これまでに得られたデータをもとに解析を行い、それぞれの系に対し定量的な結果を見出すことを目指す。解析のためのプログラムはほぼ準備が整っているが、X線鏡面散乱の実験結果が予定していたプログラムで扱いにくいものであったため、まずこの部分を改良する必要がある。これをもとに膜の構造に関する情報を決定し、X線蛍光の結果と組み合わせることで最終目標であるイオンの空間分布の定量決定を行う。
さらにこれらの実験系に関して、静電相互作用だけでなくその力学的な特徴についても明らかにするために、中性子非鏡面散乱実験を計画している。この実験・解析手法については既にGb3分子に関する研究で確立しており、スムーズに進むものと考えている。静電相互作用に加え力学特性を明らかにすることで、細胞膜モデルとしての包括的な記述が可能になると期待できる。

次年度使用額が生じた理由

設備備品費として計上していたUVオゾン洗浄装置は、研究室の運営費から支出されて購入し、本申請での購入を控えた。消耗品費に関しては、特に脂質に関して予定より少ない量で必要な実験を行うことができたため、費用が抑えられた。
またPCについては、年度末直前に実験結果がある程度揃い、解析に必要なスペックの見直しが必要になったため、購入を延期した。

次年度使用額の使用計画

今年度には実験と議論のために述べ2か月ドイツとフランスに滞在する予定で、このために約100万円を計上している。また、新たに糖脂質とタンパク質などのサンプル購入費(50万円)、消耗品費(20万円)を計上している。さらに、デスクトップPC(40万円)を購入し解析をより迅速に進めたい。平成27年度は申請最終年度となるので、成果をまとめ学会発表(物理学会・生物物理学会)のための旅費、論文の校閲費・出版費を計上する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Influence of length and conformation of saccharide head groups on the mechanics of glycolipid membranes: Unraveled by off-specular neutron scattering2015

    • 著者名/発表者名
      Akihisa Yamamoto, Wasim Abuillan, Alexandra S. Burk, Alexander Koerner, Annika Ries, Daniel B. Werz, Bruno Deme, and Motomu Tanaka
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 142 ページ: 154907-1-8

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1063/1.4918585

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり

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公開日: 2016-06-01  

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