研究実績の概要 |
本申請では、オングストロームから数十ナノメートルにわたる生体膜モデルの階層構造と静電相互作用を解明する方法論と解析法を確立するために、微小角X線蛍光散乱法(GIXF)と(X線反射率法XRR)を組み合わせ、生体膜モデル近傍におけるイオンの空間分布の精密計測およびタンパク質の空間分布・表面密度の特定に基づく、選択的・非選択的相互作用の様式の解明を目的とした研究を行った。 気液界面での合成リポポリマーブラシ単分子膜を用いた実験では、親水基の双対イオンであるPC基側鎖と水相中のイオンの相互作用をX線蛍光散乱で直接測定した。従来の分光法では得られなかった一価・二価のイオンの空間分布を分離して測定することに成功し、膜近傍におけるナトリウム・カリウム・カルシウムイオンの競合的局在の様子を明らかにした。本年度はさらに、膜構造の物理特性として膜厚とラフネスをX線反射率の測定によって取得し、GIXFで得られた情報を組み合わせ、イオンの空間局在による膜構造の変調を定量するための解析を行った。現在論文の投稿準備中である。 過酸化脂質の気液界面単分子膜を用いた系では、膜面直下水相に注入したタンパク質CRPが脂質単分子膜と相互作用することによる膜構造と直下のイオン分布の変化に注目した実験と解析を行ってきた。本年度は特に、CRPによる膜の構造のみならずその剛性変化に注目し、新たに中性子非鏡面散乱実験を行った。現在論文を執筆中である。 糖脂質Gb3を用いた系でも、中性子非鏡面散乱法を用いて膜合成の定量を行った結果をまとめた。(A. Yamamoto et al., JCP, 2015)さらに本年度は、糖脂質と中性リン脂質の二成分系で同様の実験を行い、その構造と物性の変化を測定した。現在論文を執筆中である。
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