研究実績の概要 |
肝臓の微細構造をみてみると, 肝細胞が血管系である類洞と毛細胆管に接した配置をしていて, それぞれ, 3次元特有のネットワーク周期構造をとっている. この3次元配置の数理的な解析するために, 次の3つの視点に立った研究を行うことが目的である. (1)観察立体像からの肝細胞の接着方向解析 : 動物肝臓片を共焦点レーザー顕微鏡により観察し, コンピュータ上で3次元再構築を行った像を用いて, 上皮細胞である肝細胞の隣接する細胞との接着方向性を解析し, 数理的指標を用いて表す. これは国際誌に投稿審査中である. (2)肝疾患モデルによる微細構造の形態変化解析 : 肝疾患ラットを作成し, 微細3次元構造変化を観察し, (1)で作成した指標などを用いて解析し, 正常時と肝疾患時のそれぞれの類洞-肝細胞-胆管の3次元配置の変化の解析を行う. 現在肝疾患モデル動物を作成していて, 試料採取中である. (3)数理モデルを用いて3次元形態の要因特定研究 : 生物学的, 解剖学的知見や観察像から得られた情報に基づいて4変数の偏微分方程式を用いた形態形成モデルを作成し, 形成された構造と観察像を(1)で作成した指標などを用いて比較検討を行ってきた. この結果をまとめて, 研究会で発表し, 研究会誌に投稿した. また, 実験で見られる3次元周期構造の可能性の可否を数理モデルを用いて検証した. この結果を国際誌に発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共焦点レーザー顕微鏡観察像から3次元立体再構築像を用いた構造解析について, 胆管ネットワーク配置は, 結晶構造のような物理的にきれいな結果が出ず, どのように数理的に取り扱うかを注目した. 肝細胞ネットワークやそのネットワークの界面に注目すれば, 統一的な理解が可能であることがわかってきた. また, 形態数理モデル作成では, 解剖学的所見で言われてきている肝臓の基本単位である肝小葉内の部位性を数理モデルにさまざまな形で導入し, その影響を考え, 解析し, 肝細胞の研究者らから好評を得た.
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