研究課題
水星、火星、月や木星の衛星であるガニメデは、地球と似た鉄合金の液体核の存在が示唆されている。これらの天体の液体核の大きさや組成に制約を与えることは、惑星の材料物質や形成時の酸化還元環境、核の現在の温度や惑星の進化過程の解明につながるため非常に重要である。鉄合金メルトの物性およびその圧力依存性は、鉄中に溶解する軽元素の種類と量によって大きく変化する。本研究は、これまで不可能であった火星核条件まで、鉄合金メルトの密度と音速の測定を成功させ、将来の惑星探査データとの比較により液体核の組成と大きさに制約を与えることを目的としている。平成26年度は、KEK PF AR-NE7Aビームラインに新たにCCDカメラを導入し、イメージングの高度化を行った。また、超音波信号および画像の自動取得プログラムを開発し、高温下での速やかなデータ取得が可能になった。また、これまでの測定データの見直しを行った結果、温度と圧力値に問題があることがわかった。この問題は、温度と圧力の決定方法を変更することで解決し、現在6 GPaまでのFe-Sメルトの音速測定結果を論文にまとめている。また、本研究の要素技術である先端5mmのアンビルを使った高圧セルの開発を進めた。高圧下でのアンビルギャップを稼ぐために、一辺11mmの八面体を採用し、ヒーター内部のカプセルやスペーサーの形状と材質を変えて何回かテストを行ったが、いずれのセルにおいても超音波を伝えるバッファーロッドの変形が激しく、良好な信号を得ることができなかった。このことから、超音波パルエコーオーバーラップ法による音速測定では、アンビルの先端サイズに対し圧力媒体が大きすぎると測定が難しいことがわかった。今後、このデータを元に高圧セルの開発を進める。
3: やや遅れている
研究概要で述べたとおり、要素技術である先端5mmの高圧セルの開発が難航しているため、研究はやや遅れている。また、そのため密度測定手法の開発まで進まなかった。一方、新しいイメージングシステムの導入、画像、超音波信号の自動取得ソフトウェアを開発した。また、温度、圧力値の決定方法の改善など、基礎的な測定技術は着実に高度化しており、高圧セルの開発以外は概ね順調に進捗している。
これまで開発してきた一辺11mmの高圧セルは、変形が著しく良好な超音波の信号が得られなかったため、平成27年度は、一辺10mmの八面体圧力媒体を用いた高圧セルの開発を進める。これまでの実験結果から、圧力媒体ならびに超音波信号を伝えるサファイア単結晶のバッファーロッドを小型にすることで、バッファーロッドおよび試料の変形を抑え、良好な超音波エコーが取得できると考えている。今年度中に、高圧セルの開発を完了し、10 GPaを超える圧力でのFe-S系メルトの音速の予備的なデータの取得まで漕ぎ着ける予定である。また、密度の測定技術の開発も進める予定である。
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ISIJ International
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