研究課題
今年度は、昨年度まで開発してきた先端5mmの高圧セルと高度化した超音波測定技術を使って、実際にFe80S20メルトの音速測定を行った。15GPaまでの測定は主にKEK PF-AR NE7Aビームラインで、15GPaを超える圧力領域ではより大型のプレスを使えるSPring-8のBL04B1ビームラインで行った。最適化された先端5mmの高圧セルは、硬い材質の超硬アンビル(TF05)を使って10MNの荷重を掛けることで、約23GPaという非常に高い圧力を達成することができた。しかし、圧力マーカーであるNaClが相転移して使えなくなること、減圧時にアンビル8個すべて割れたことから、このセルを使った定常的な実験は8MNを上限とした方が良いことが分かった。荷重8MNであっても、一つの目標であった20GPaを達成することができた。最も精度の良い測定で誤差1%、最も高い圧力条件である20GPaにおいても誤差2.5%で測定することができ、これまでの低圧での測定(誤差1%程度)と比べても十分な精度のデータが得られた。本研究で得られたFe80S20メルトの音速は、低圧用のセルで測定した7GPaまでの結果(Nishida et al. 2016)と調和的であった。圧力の増加に伴い、10GPaまでほぼ線形にFe80S20メルトの音速は増加するが、10GPa以降で速度の増加率は減少していく傾向がみられた。また、これまでの低圧の結果と同様にFe80S20メルトの音速の温度依存性は、ほとんどみられなかった。そこで、本測定データを状態方程式でフィットするため、状態方程式の検討を行い、フィッティング用のGUIアプリケーションの作成を行った。熱圧力を考慮した3次のBirch-Murnaghanの状態方程式(Anderson et al. 1989)を採用したところ、測定データをうまく再現することに成功した。
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