[1]応力地磁気効果とよばれるメカニズムによって、地震発生直後にどのような磁場変化が生じうるのかを記述する表現式を求めることが本研究のテーマである。所望の表現式が得られたならば、それをもとに地震発生直後に実際に観測されたと報告されている地磁気変化の発生メカニズムが応力磁気効果であるか否かを判定することができる。さらに、「磁場観測によって地震波観測よりも先に地震の発生を検知できるか」という応用上有用な問題に対する答えも得られると期待できる。 [2]まず、無限媒質中の点震源を仮定した場合の解を、時間領域で求めた。すでに先行研究で周波数領域での類似問題の解がえらえていたが、本研究では周波数領域解をフーリエ変換することに成功し、より有用な時間領域解を導出することができた。 [3]次に、絶縁体(大気)と導体(大地)の二層からなる半無限媒質中の線電流源からの電磁場変動を考えることで、最初に求めた無限媒質解が現実の地球における現象をどの程度正しく表しているのかを検討した。ここでも解析解を導出することに成功し、それによって、上記の無限媒質を仮定した解が、相当範囲で有効であることを示した。 [4]得られた表現式を数値的に検討することで、次の結論が導かれた。まず、大地の電気伝導度は、地震発生時の電磁場変動がいつ・どれほどの大きさで伝搬するのかに大きく影響することが確かめられた。地震波到達前に電磁場変動が観測されるためには、大地の比抵抗が比較的小さいこと(<100 S/m)が必要であることが明らかになった。また、現実的な震源過程を想定する場合、地震波到達前に生じる磁場変動は高々0.2-0.3nT程度であり、地磁気の連続観測記録からこれを抽出することは、計測技術および時系列解析の精度向上なしには難しいことが示された。 [5]以上の結果を、2編の論文として査読付き国際誌で発表した。
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