研究課題/領域番号 |
26800235
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
嶌生 有理 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 助手 (60710548)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 衝撃変成 / 普通コンドライト / 二段式軽ガス銃 / 小惑星 / 衝突クレーター |
研究実績の概要 |
本年度は,高速度衝突による普通コンドライト模擬物質のクレーター形成過程と衝突生成物の物理化学進化の同時解明を目的として,治具の設計・開発,宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス銃を用いた衝突実験,クレーター形状の測定と衝突生成物の解析を行った. 標的にはかんらん岩,かんらん石粉体,普通コンドライト模擬物質粉体(かんらん石,輝石,斜長石,硫化鉄の混合物)を用い,鉄およびかんらん石弾丸を2-5km/sで衝突させた.かんらん岩のクレーター体積について強度支配域のパイスケーリング則を適用した結果,ベキ指数は-1.3となり,玄武岩の結果と調和的となることがわかった.クレーターの衝突点直下ではかんらん石の波動消光とPDFが観察されたが,溶融組織および高圧相は見られなかった.複数の放出破片表面には付着したかんらん石溶融物が観察され,そのMg含有量は溶融前と同程度であった.かんらん石粉体のクレーター内部では,破砕領域の空隙率が0.4から0.5に増加し,積算サイズ分布のベキ指数は(-2.6+/-0.3)となることがわかった.衝突速度の増加とともに破砕領域は増大し,かんらん石の圧密集合体の割合が増加した.圧密集合体は,その粒間を微細なかんらん石粒子とかんらん石および鉄弾丸の混合溶融物が充填することで固着していることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,治具の設計・開発と前後期に1回ずつの衝突実験を行い,クレーター形状の測定とクレーター内部の衝突生成物の空間分布および化学組成変化の解析を行った.また,岩石弾丸および効率的な薄片の作成手法を開発し,分析ルーチンを確立した.後期のマシンタイムが年度末となったことから解析にやや遅れが生じているが,おおむね計画通りに進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた衝突生成物の解析を継続する.二次イオン質量分析計による溶融物の微量元素の局所定量分析を行うと同時に,微細な溶融物を同定するため,当初の計画に加えて透過型電子顕微鏡による微小構造解析を行う予定である.普通コンドライト模擬物質粉体については薄片を作成し,表面観察,空隙率分布および積算サイズ分布の測定,高圧相の同定,溶融組織の化学組成変化の解析を行う. また当初の計画通り,粉体におけるクレーター形成過程と衝撃変成構造の空間分布を調べるため,宇宙科学研究所の横型および縦型二段式軽ガス銃を用いた普通コンドライト模擬物質粉体層への高速度衝突実験を計画している.共同利用申請を行い,既に採択されているが,サボを用いた縦型銃の共同利用は確定的ではない.これが実現できない場合には,横型二段式軽ガス銃を用いて(Fe,Ni)を含む普通コンドライト模擬物質粉体への衝突実験を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
クレーター内部の衝突生成物の空間分布と化学組成変化の解析を行い,その結果を学術会議で報告する計画であった.しかし研究を進める中で,より多くの情報を発掘するため慎重かつ十分な解析が必要となったため,参加を断念したことが主な原因である.
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次年度使用額の使用計画 |
学術会議での発表は次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てる予定である.
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