研究実績の概要 |
本研究は小天体の小惑星レゴリスへの高速度衝突による衝突生成物の物理化学進化の解明を目的としている.最終年度は標的コンテナー並びに標的粉体への樹脂含浸システムの設計と制作を行い,宇宙科学研究所の縦型二段式軽ガス銃を用いた普通コンドライト粉体への垂直衝突実験と衝突生成物の解析を行った. 弾丸は直径 2 mm の鉄球,アルミ球,並びにガラス球を用い,5.5 km/s に加速した.標的はレゴリスを模した粉体で,普通コンドライト (L6, LL6) 並びに長石を用いた.標的は直径×高さが 160×60 mm の円筒容器の中心に直径×高さ 36×60 mm で充填し,周囲を珪砂で充填した.実験後,レーザー変位計を用いてクレーターの直径並びに深さを測定し,硬化樹脂を用いて標的粉体を固化して衝突点を含む厚片を作成した.これらの試料を電界放出型走査電子顕微鏡を用いて観察し,エネルギー分散型 X 線分析装置と電子プローブ微小分析器により定量した.クレーターの直径並びに深さは弾丸密度の増加とともに増加し,クレーター体積は π スケーリング則で期待される体積の 0.6 倍以下だった.本実験ではクレーター直径が容器直径と同程度だったため,クレーター形成時の掘削流が容器壁面によって制限された結果と考える.衝突によって細粒化した粒子 (破砕粒子) は,主としてクレーター中心の幅 6-8 mm,深さ 3-4 mm の領域に分布するほか,クレーター表面に分布することがわかった.溶融組織を示す珪酸塩と金属弾丸の機械的混合物 (メルト) は放出破片並びにクレーター表面に観察されることがわかった.メルトは主としてかんらん石と輝石の混合物から構成され,微細な金属球を含むことが明らかになった.
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