研究課題/領域番号 |
26800237
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
市川 浩樹 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, WPI研究員 (50570503)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 個体地球惑星物理学 / 地球・惑星内部構造 / 大陸地殻 / 島弧の衝突・沈み込み |
研究実績の概要 |
近年の地質学的な研究により、年間3-5km3/yrもの大陸地殻物質が地表から、沈み込んでいることが指摘されているが、どの程度の深さまで沈み込むかについての詳細な研究はあまり行われておらず、特に、日本列島に衝突している伊豆半島のような海洋性島弧を構成する物質のマントル深部に沈み込む割合についての研究はなされていない。大陸地殻物質は放射性元素を大量に含むため、仮にマントル深部まで、沈み込んだ場合、熱源として、マントルダイナミクスに大きな影響を与える可能性が大きい。平成26年度にほぼ完成した島弧の沈み込みを扱える数値計算コードを用いて、大陸地殻物質がマントル深部へ沈み込む量を推定することが、本研究の実施計画の平成27年度の主要な課題であった。
平成27年度は、本研究で開発した計算コードを用いて、島弧の沈み込みの数値計算の条件を系統的に変化させて、多数行った。その結果、伊豆半島と同じくらいの大きさの島弧では、沈み込むスラブの温度が平均的な値である場合、島弧を構成する大陸地殻物質の20%程度の量が地下300km付近まで、沈み込めることがわかった。また、沈み込む島弧の大きさを系統的に変えて行った数値計算の結果より、九州-パラオ海嶺などの小規模な海洋性島弧では、より多くの割合の大陸地殻物質がマントル深部まで沈み込めることが明らかになった。さらに沈み込むスラブの温度を系統的に変化させ行った数値計算の結果より、暖かいスラブでは島弧を構成する大陸地殻物質はマントル深部まで、ほとんど沈み込めないことも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な目的の一つである島弧の沈み込みの数値計算コードの開発は終了しており、系統的にパラメータを変化させ、多数の数値計算を行った。現在その結果をまとめており、論文誌に投稿する予定である。もう一つの主要な目的である、スラブの沈み込みの二次元対流計算コードを用いた数値計算にはまだ着手していないが、計算コードの開発は終了している。従って、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに、本研究課題で開発した島弧の沈み込みの数値計算コードを用いて、島弧を形成する物質の内、どの程度の量が沈み込むかを明らかにした。平成28年度は、その結果をまとめて、論文誌に投稿する予定である。その結果と、現在までに研究代表者らによって見積もられた、海溝での堆積物や構造浸食によって削られた大陸地殻物質のマントル深部までの沈み込み量を合算して、マントル深部に沈み込まれた大陸地殻物質の総量を見積もる。
一方、平成27年度までに開発したもう一つの計算コード(スラブ沈み込みの二次元対流計算コード)を用いて、沈み込んだ大陸地殻物質のマントル内での分布を明らかにする。例えば、沈み込んだ大陸地殻物質は、大陸の下に集中的に存在するのか、それとも、大陸や海洋の下に関わらず、まんべんなく存在するのかを確かめる。
最終的には、沈み込んだ大陸地殻物質を含んだマントル対流計算を行い、沈み込んだ大陸地殻物質が大陸移動に与える影響を評価する。そして、沈み込んだ大陸地殻物質がマントルの熱史に与える影響の評価も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に、当研究費から投稿論文の掲載料の支払いが無かったため。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費に統合
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