研究課題/領域番号 |
26800239
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長岡 央 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (10707805)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 蛍光X線分析 / 惑星探査 / 能動型X線発生装置 / 焦電結晶 |
研究実績の概要 |
現在世界規模で宇宙探査が活発化しており、日本でもいくつかの惑星探査計画が検討されている。このような背景の中、本研究の目的は将来の惑星着陸探査への搭載を目指し、着陸地点での高精度な元素分析が可能な観測装置の開発を目指すことである。そこで焦電結晶を励起源とした能動型のX線発生装置の開発を進めている。既存の焦電結晶型X線発生器は、安定した高強度の照射ビームが得られないという問題点があり、定量精度や観測時間などの点から惑星探査への応用は現状ではまだ難しい。そこで惑星探査に適用可能なレベルまでに安定高輝度化を達成したX線発生器を開発することが本研究の目的である。昨年度はX線強度の安定化と高輝度化を目指し、基礎実験を行い必要な物性値を求めた。当該年度は、それらの物理パラメータを基に、数値計算により惑星表面を構成する主要元素(Al,Si,Ca,Feなど)の定量精度や観測時間を求め、惑星表面探査への有用性を確認し、発生装置の設計を行った。具体的には以下に実績を示す。
1)実験結果を基に、結晶サイズや封入ガスの種類圧力の物性値を求め、検出器を含めた分光計の設計を行った。 2)上記実験結果を基に、実際に惑星表面探査への応用時の定量精度・観測時間を計算し、得られるサイエンスゲイン(月着陸探査を想定)について検討した。 3)発生装置と分光計を含めた分析装置の設計を行った。 以上の成果は、複数の国内学会・国際学会で報告し、査読付き論文(Nagaoka et al. 2016.)にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
惑星を構成する主要元素には、Mg,Al,Si,Ca,Ti,Feがある。その中で、Mgは特性X線のエネルギーが小さく、励起源となるX線から離れており励起効率が悪い。Mgは天体の地球化学的進化プロセスを追う上で非常に重要な元素であるため、高精度な分析が求められる。現状の発生器では、Mgの分析は他の主要元素と比較して精度、観測時間の点で劣る。その点を改善する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Mg分析の精度・観測時間の改善を行う必要があるため、X線発生装置の改良を行う。Mg,Al,Si分析に特化した低X線エネルギー分析用のX線発生装置は、焦電結晶、ペルチェ素子、金属ターゲット(Mo)から構成され、それが0.1Pa程度のガス【窒素】で封入されている。X線発生装置を構成する焦電結晶のサイズや、それを封入する容器の工夫、オペレーション時の温度管理などをさらに検討し改善を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
惑星を構成する主要元素のひとつであるMgの精度が現状の発生器では不十分であるため、精度改善・観測時間短縮を目的にし、これらの点について追加で実験を行い検討する。とくに発生器を構成する焦電結晶、ペルチェ素子、金属ターゲットについて改良を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
発生器の改良のため、素材である焦電結晶やペルチェ素子、Mo箔(金属ターゲット)の材料費や加工費に使用。また成果報告のための、印刷費や学会発表旅費に使用する。
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