研究実績の概要 |
本研究の目的は、将来の惑星着陸探査への搭載を目指した元素分析装置として、焦電結晶を励起源として採用した能動型のX線発生装置の開発である。しかし既存の焦電結晶型は、安定した高強度の照射ビームが得られないという問題点がある。昨年度はX線強度の安定化と高輝度化を目指し、基礎実験を行い必要な物性値を求めた。当該年度は、 過去の実験結果を基に、結晶サイズや封入ガスの種類圧力の物性値を決め、発生装置の作成を進めた。1)加速した電子が衝突する金属のターゲットの形状を、前方に突き出した円筒型ターゲットにすることで、平面型の金属ターゲットと比較して、発生するX線の量が増大した。2)昨年度までの基礎実験結果を基に、焦電結晶、ペルチェ素子、金属ターゲット(銅薄膜)を封入する器を作成し、窒素N2で1Paの環境下のもと発生装置を模した試作品を使って、発生X線を測定した。本研究で最適化した発生装置のX線強度は、市販のCool-X(Amptek社)のものと比較して、約50倍の高輝度X線が得られた。3)上記の銅薄膜ターゲットでは、Siより軽い軽元素(Mg, Al)の特性X線の励起にはむかないため、Moの薄膜を金属ターゲットとして用いた。計算機シミュレーションと実験室での基礎実験結果から、Moターゲットの有用性を示した。 Si以上の比較的重い元素に関しては、Cu薄膜を用いたX線発生装置、Al, Mgといった軽元素に関してはMo薄膜を用いたX線発生装置をそれぞれ使用することで、多くの元素を測定可能となる。
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