研究課題/領域番号 |
26800240
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研究機関 | 独立行政法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
松澤 孝紀 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域地震・火山防災研究ユニット, 主任研究員 (90500744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スロースリップイベント / 数値シミュレーション / 沈み込み形状 / プレート間地震 / 南海トラフ / Cascadia / 地震発生サイクル / 深部低周波微動 |
研究実績の概要 |
本課題で実施する数値シミュレーションでは,大規模かつ高速な計算が必要となる.そのため,本年度は分散メモリ型の大型計算機において並列計算が実行可能となるよう,プログラム開発を行った.このプログラムによる結果を,これまでの数値計算プログラムによる結果と比較することで,計算結果が正常に得られていることを確認した.さらに,ファイル入出力や行列計算等について,高速計算のための改良を加えた.これにより,32ノード(768コア)の分散メモリ環境で試験計算したところ,1ノード(24コア)の場合に比べ,実際の計算速度が30倍に高速化された. 最初の試みとして,これまで地域を分けた狭い範囲での計算しかできていなかった南海トラフ領域について,全域を一度に扱うモデルを構築し,本数値シミュレーションプログラムを適用した.ここでは,実際のプレート沈み込み形状と深部低周波微動の分布を考慮し,数値モデルを構築した.従来の研究で得られていた結果と同様に,短期的スロースリップイベントおよび豊後水道における長期的スロースリップイベントの繰り返し発生を再現できることを確認した.さらに,これまではモデル領域の端の影響により評価ができなかった,プレート間大地震発生サイクル間におけるスロースリップイベントの発生挙動の変化についても,議論することが可能となった.また,歴史資料から推定されているような南海トラフ全域におよぶ大地震についても,数値モデル上で再現できており,より現実的な数値モデルとなっている.この結果について,本年度国内および国際学会にて発表を行った.さらに,北米Cascadia地域についても,研究協力者との共同研究を開始するとともに,本課題で開発したプログラムを用い,プレート沈み込み形状および深部低周波微動の分布を考慮したモデルについて摩擦パラメターを試験的に与え,数値計算を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は数値計算プログラムの開発が無事に終了し,分散メモリ型計算機環境での高速な計算が可能となった.さらに,南海トラフとCascadiaを対象領域とした試験計算を開始しており,当初の計画どおり,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在試験計算を行っている北米Cascadiaおよび南海トラフを対象領域とした数値モデルについて,長時間の大規模数値計算を進めていく.本計算は適応時間幅による時間発展の計算を行っている関係で,設定する摩擦パラメター分布によって計算時間が変化することもあり,必要な時間を正確に見積もることは難しいが,現状の試験計算からは,Cascadia領域に関しては地震サイクルスケールでの結果を得る場合,長期の計算時間が必要と予想される.南海トラフはCascadiaに比べ計算時間が短くすむため,様々な条件を比較的試しやすいことから,Cascadiaについてはまずプレート間地震のサイクルスケールの計算結果を得ることを目指すとともに,南海トラフの数値シミュレーションにも重点をおいて進めることで,本課題の目的である地域間の比較研究のための数値計算結果を得ることを目指す.
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