スロー地震の活動に地球潮汐が与える影響について,観測による研究が近年進展を見せている.この影響を評価するため,地球潮汐(固体潮汐および海洋潮汐)による応力変化がスロースリップイベントの発生に与える影響を取り入れた数値計算を行った. まず,プレート形状を考慮しない平板のモデルにおいて,地震発生サイクルにわたった挙動を評価した.このモデルにおいては,潮汐による応力が最大となるときに,スロースリップイベントが発生する傾向を再現することができた.また,大地震発生サイクルの時間スケールにおいて,潮汐の影響について顕著な変化はとくにみられなかった. 次に,四国地域に沈み込むプレート形状を与え,実際のスロー地震分布に基づいたモデルを構築し,同様の数値シミュレーションを行った.潮汐の効果を導入することにより,スロースリップイベント時の最大すべり速度が多くの領域で増加した.また,スロー地震発生域が比較的孤立している四国東部において,より短い発生間隔で,より周期的に発生する傾向がみられた.この周期は,数値計算で考慮した10の分潮のうち,約半月の周期をもつMf分潮の整数倍に近づく傾向がみられたものの,異なるパラメタのモデルを用いて,検討していく必要がある.長期間の数値計算においては,地震発生サイクル後半に発生間隔のばらつきが大きくなる傾向がみられた.これは大地震発生域とスロースリップイベント発生域の間で発生する長期的スロースリップイベントの影響が考えられる.これについても,より長期間の数値計算を行い,検証する必要がある.
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