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2014 年度 実施状況報告書

マグマオーシャンと大気の共進化過程で生じる惑星多様性の理解

研究課題

研究課題/領域番号 26800242
研究機関東京大学

研究代表者

濱野 景子(飯塚景子)  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (40646171)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード地球型惑星 / マグマオーシャン / 水蒸気大気 / 初期進化 / 系外惑星
研究実績の概要

本年度はまず,これまでの水蒸気大気ーマグマオーシャン共進化モデルを用いて,マグマオーシャンの熱進化における水素の効果を議論した.大気中に水素を含むことで大気の平均分子量が軽くなる.その結果,より多くの水蒸気が大気へと分配されることで温室効果が強くなり,惑星の冷却が遅くなる可能性があることがわかった.この結果をGoldschmidt conferenceで発表した.一方で,水素の付加が断熱温度勾配,上層大気の温度構造へ与える影響は,既存の灰色近似を用いた放射モデルでは評価しきれない.確定的な結果を得るためには非灰色大気での放射対流平衡構造の計算が必要である.

次にこれまでの進化モデルに新たに組み込むための非灰色大気の惑星放射計算の改良に着手した.HITEMPを用いたライン-バイ-ライン計算で惑星放射・恒星光に対するアルベドを高速に計算することが可能となった. この計算コードを用いて,G型星周りの固化しつつある地球型惑星の進化計算をより定量的に行うとともに,放射スペクトル進化も同時に計算し,マグマオーシャンを持つ惑星のスペクトル,惑星軌道,存在確率を整合的に議論した.ハビタブルゾーン内では,溶融した地球型惑星からの強い熱放射は百万年程度で急速に減衰し,若い恒星周り以外ではマグマオーシャンは検出されない.一方,それより内側の軌道では,固化の期間高い熱放射が維持される.また,初期の水量がバルクで~1wt%以上であれば,主系列の間にわたり溶融状態が継続しうることがわかった.惑星-主星コントラストは恒星に近いほど高くなり,存在確率はハビタブルゾーンの内側限界近傍でもっとも高くなる.ハビタブルゾーンとその内側の軌道とでの存在確率の二分性を検出することで,系外地球型惑星において水が主要な揮発性元素であるかどうかが制約できる可能性を示唆した.以上の結果を,Astrophysical Journalに投稿した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

吸収線データベースを用い,非灰色大気のラインーバイーライン放射計算を高速に行えるコードの開発は完了した.また,同データベースを用いて,k分布法パラメータの算出・相関k分布法を用いた放射フラックス計算を行うコードの開発も完了している.非理想気体の擬湿潤・乾燥断熱温度勾配を計算するサブルーチンも開発済みであり,あとは放射対流平衡の構造を求める反復計算部分の開発を残すのみである.

また,放射計算コードの開発と並行して,進化モデルへの組み込みを完了した.このコードを用いて,直接撮像での検出可能性について成果を上げられた.上記の相関k分布法を用いたコードを開発後,速やかに本課題の主要部分である水素ー水蒸気大気とマグマオーシャンの進化過程の検討に移ることができる.

今後の研究の推進方策

まずは,非灰色大気での放射対流平衡構造の計算コードの開発を行う.放射フラックスの計算で算出している透過関数を用いて,放射対流平衡の大気構造をNewton法で求めるコードを開発する.

次に,マグマオーシャンと大気間での揮発性元素の交換を,既存の水蒸気のみから水素・二酸化炭素も取り扱えるように拡張する.溶解度はそれぞれHirschmann et al. (2012), Papale(1997)の値を採用する.検討の過程で,特に水素の溶解度はマグマの酸素フガシティに強く依存することが先行研究により指摘されていることがわかった.また,大気組成・マグマ中の酸素フガシティによっては大気ーマグマ間で酸素のやり取りが生じると考えられる.初期マントル中の酸化還元度および初期大気組成は,固化後の惑星進化の初期条件を与えるうえで非常に重要である.よって,大気ーマグマ間での化学反応についての文献を調査し,大気進化・マグマオーシャンの熱進化と同時に,マグマの酸素フガシティと大気組成の進化も議論することとした.

次年度使用額が生じた理由

コードの高速化が想定よりも順調に進んだことと,所属研究室でより高スペックの計算機が使用可能になったことにより,東京大学のスーパーコンピュータの利用料が今年度は不要となった.また,個人計算機・ディスプレイ・ソフトウェアの購入も同理由により次年度に繰り越した.論文は現在査読中であり,投稿料も次年度に繰り越した.

次年度使用額の使用計画

前年度に購入を見送った個人計算機・ディスプレイ・ソフトウェアの購入に使用する.また,査読中の論文も近日中に修正が完了する見込みであり,受理後の投稿・掲載料に使用する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)

  • [学会発表] Development of a radiative transfer model for steam atmospheres and application to Earth-like planets2015

    • 著者名/発表者名
      Masanori Onishi,Yasuto Takahashi, Yoshiyuki O. Takahashi, Yutaka Abe, Keiko Hamano, George L. Hashimoto, Yoshi-Yuki Hayashi, Masaki Ishiwatari, Hajime Kawahara, Kiyoshi Kuramoto
    • 学会等名
      Workshop on Exoplanets in JFY2014
    • 発表場所
      東京大学福武ホール(東京都)
    • 年月日
      2015-03-02
  • [学会発表] マグマオーシャンに覆われた惑星の光度進化曲線とその検出可能性2014

    • 著者名/発表者名
      濱野景子,河原創,阿部豊,大西将徳,はしもとじょーじ
    • 学会等名
      日本惑星科学会2014秋季講演会
    • 発表場所
      東北大学片平さくらホール(宮城県)
    • 年月日
      2014-09-24
  • [学会発表] Magma Ocean / Protoatmosphere Coupling and Role of giant Impacts in Protoatmosphere Loss2014

    • 著者名/発表者名
      Keiko Hamano, Yutaka Abe
    • 学会等名
      ISSI-BJ/ISSI workshop, "The disk in relation to the formation of planets and their protoatmospheres"
    • 発表場所
      北京(中国)
    • 年月日
      2014-08-28
    • 招待講演
  • [学会発表] Evolution of Early Atmosphere on Terrestrial Planets after Giant Impact2014

    • 著者名/発表者名
      Keiko Hamano, Yutaka Abe, and Masanori Onishi
    • 学会等名
      Goldschmidt Conference
    • 発表場所
      サクラメント(アメリカ)
    • 年月日
      2014-06-10
    • 招待講演
  • [学会発表] Formation and Early Evolution of Atmosphere and Ocean2014

    • 著者名/発表者名
      Hidenori Genda, Keiko Hamano, Yutaka Abe
    • 学会等名
      Goldschmidt Conference
    • 発表場所
      サクラメント(アメリカ)
    • 年月日
      2014-06-10
    • 招待講演

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公開日: 2016-06-01  

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