研究課題/領域番号 |
26800243
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
今田 由紀子 (金丸由紀子) 気象庁気象研究所, 気候研究部, 研究官 (50582855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 異常気象 / 確率予測 / 季節予報 / 統計的ダウンスケーリング / 極値解析 / 気候モデル |
研究実績の概要 |
平成27年度は以下に示す3つの研究を実施した。 ①本課題の主軸の一つである大気海洋結合モデル(CGCM)を用いた季節予測実験について、予測システムの概要と予測精度の検証結果をまとめた論文を国際誌に投稿し、受理された。 ②本課題の最終目標である極端異常気象の確率予測を実現するためには、対象事例に対してランダムな摂動を与えた大量のアンサンブル実験を生成して大気のゆらぎ幅を再現し、発生頻度を見積もる必要がある。前年度までの成果では、特定の極端気象が発生した限られた期間に対してアンサンブルを生成し、確率予測の実現可能性を検証していたが、本年度はCGCMの大気部分(AGCM)を用いて過去60年に渡る長期間の大量アンサンブルを生成し、確率予測の精度検証を行うためのデータを揃えた。このデータベースを利用して、ダウンスケーリングを適用する前の結果が日本域及び世界各地の気候変動をどの程度再現できているかを調査し、この成果を平成27年度日本気象学会秋季大会にて発表した。 ③モデルによる季節予測とダウンスケーリングによって得られた特定の事象の頻度分布から閾値を超える異常気象の発生確率を見積もるためには、頻度分布の尾部を正確に見積もるための極値解析が必要である。平成27年度は、前年度に開発した極値分布を推定する手法を②のデータに適用し、手法の妥当性を検証した。また、前年度までの解析ツールの開発状況を平成27年度日本気象学会春季大会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成27年度までに、長期間に渡る限られたアンサンブル数の実験結果にダウンスケーリング及び極値解析を適用して予測精度を検証する予定であったが、当初の計画にはなかったAGCMによる長期実験のアンサンブル数を増強する計算資源を確保することができたため、本年度はアンサンブル数の充填を優先し、本課題の手法の検証に役立てることにした。この数値実験に数カ月の時間を要したため、ダウンスケーリングを適用するまでに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、平成27年度中に長期間に渡る限られたアンサンブル数の実験結果にダウンスケーリング及び極値解析を適用して予測精度を検証する予定であったが、AGCMによる長期実験のアンサンブル数を増強する計算資源を確保することができたため、アンサンブル数の充填を優先して本課題の手法の検証に役立てることとした。平成28年度以降は、本年度に整えた長期間に渡るAGCMのアンサンブルデータを利用して、ダウンスケーリング及び極値解析の妥当性を検証する。
AGCMによる再現実験はCGCMによる季節予測実験に設定が近いため、本課題の手法の検証に有効である。当初は、計算負荷の高いCGCM実験のアンサンブル数を可能な限り充填して予測性能を検証する計画であったが、AGCMによる長期の大量アンサンブルデータを得ることができたことから、平成28年度以降はAGCMの結果を用いて確率予測の性能を示すことに重点を置くことに変更し、最終目標であるCGCMによる季節予測については限られた極端事例に的を絞って適用可能性を示すこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の妊娠・出産に伴い、国際学会The 26th General Assembly of the International Union of Geodesy and Geophysics (IUGG2015, プラハ、2015年6月22日~7月2日)への参加を中止したため、海外出張旅費のために確保していた予算を次年度に回すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究発表に使用するノートPCが老朽化したため、更新のための予算に当てる。また、前年度までの成果を国際誌にて発表するための論文投稿料に当てる。
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