近年、全球気候モデルを用いて数か月先の気候の変動傾向を予測する季節予報の実用化が進められている。季節予報では、大気の揺らぎによって生じる偶発的な変動を捉えるため、摂動を加えて複数の予測値(アンサンブル)を作成するが、①アンサンブルメンバー数の不足および②解像度の不足から、地形性の大雨などの局所的な極端現象の発生確率を予測することは困難である。本研究では、①と②の問題を克服するため、季節予測のメンバー数を補填し、さらに高解像度の地域気候モデルを用いてダウンスケーリングする疑似季節予測実験を実施し、局所的な極端異常気象の確率予測に挑戦してきた。 前年度までの成果では、全球気候モデルを用いたラージアンサンブル疑似季節予測結果を用いて、低頻度の各種極端現象の発生確率の予測性能を検証し、アンサンブル数を増やすことによる改善を確認した。本年度は、ダウンスケーリングした高解像度の予測結果を解析し、高解像度化による効果を検証した。九州地方の複数の地域の地形性の大雨を解析対象とし、発生確率の予測の性能を調査した。高解像度化により、局所的な大雨をもたらすプロセスが地域ごとに異なる様子(九州西部はモンスーンの強化、九州東部は台風の到来、など)をモデルが妥当に再現し、発生確率の予測可能性が向上することを確認することができた。また、メンバー数を増やしたことで予測スキルにも改善が見られたが、実用レベルには達しておらず、さらなるモデルの高解像度化やスキルの検証方法の見直しが必要であることが示唆された。
|