大気を想定したラージ・エディ・シミュレーション(LES)の下部境界条件として必須である接地境界層のパラメタリゼーションについて、LESによる感度実験を行いインパクトを評価する一方、乱流の直接計算(DNS) や気象研究所の大型風洞で計測した境界層乱流の時系列データをもとに、何らかの平均操作を含む定式化を行う必要性を確かめた。本研究の成果を日本流体力学会年会や米国気象学会の境界層と乱流に関するシンポジウムで発表するとともに、学術誌へ投稿した。以下に述べる最終年度の研究結果を反映させながら、今後も原稿の改訂を行い、論文発表する。 境界層の渦サイズに依存した時間スケールをダイナミックに決定しながら時間平均を行った風速を求める。平均化された風速により運動量フラックスを与える新たな接地境界層のパラメタリゼーションを、LESに組み込んだモデル計算を試行した。接地境界層のパラメタリゼーションを空間平均で与えた場合と同様の速度分散の大きさをもつようになった。 気象モデルが高解像度化し、LESとみなせるようになった場合のインパクトも調べた。顕著気象を再現のために利用される領域気象モデルのひとつである、気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)の接地境界層のパラメタリゼーションに対し、上述の時間平均を伴った風速に依存するように変更したバージョンを作成した。Mashiko(2015)を参考に、JMA-NHMにより2012年のつくば竜巻を再現し比較した。新たなパラメタリゼーションを導入した場合、最大風速は1割程度増加するとともに、竜巻渦がマルチセル構造を持つように変化した。
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