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2015 年度 実施状況報告書

メソモデルの高解像度化に向けた新たな大気境界層乱流モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 26800246
研究機関気象庁気象研究所

研究代表者

北村 祐二  気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (40455275)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード大気境界層 / 乱流モデリング / 解像度依存性
研究実績の概要

大気境界層の数値モデリングで用いられる乱流パラメタリゼーションの手法は,Raynolds-Averaged Navier-Stokes (RANS)とLarge-Eddy Simulation (LES)に大別される.しかし,RANSとLESのいずれもその適用範囲に含まれない中間領域が存在することが知られている.この中間領域はterra incognita(未開の地)と呼ばれている.数値予報モデルの高解像度化に伴い,terra incognitaに適用可能な乱流スキームが不可欠となっている現状を踏まえ,新たな乱流スキームを提案することを目的として本研究を推進している.
今年度は,推定された長さスケールの解像度依存性を経験的関数として同定し,LESの枠組みを拡張することでそれを適用させるための定式化を構築した.新たな定式化に基づく乱流スキームを用いて,terra incognitaを含む様々な水平解像度で数値実験を実施した.従来のLESではterra incognitaでは人工的な対流が卓越するが,新たなスキームでは,セル状対流・ロール状対流のいずれの場合でも,解像度に応じた乱流輸送が再現されることを示した.安定成層となるエントレインメント層についての解析も行い,この領域においても混合層と同様の改善が見られることを確認した.ただし,現状のスキームでは接地境界層の温度勾配の再現性に課題が残ることが明らかとなった.本研究成果は,国内外の学会で発表するとともに,学術誌に論文を投稿した.
また,接地境界層の構造を決めるのに重要な役割を持つ地表面からの顕熱フラックスを診断する際に,モデル解像度によらずに整合的に算出するための手法についても,前年度から引き続き検討してきた.今年度はその成果を取りまとめ,学術誌に投稿し受理された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新たな定式化に基づく乱流スキームを実装し,terra incogitaにおける乱流輸送の表現が従来型のスキームと比べ,著しく改善することを確認している.現状では,接地境界層の温度勾配の再現性が不十分であり,定式化には課題が残っているものの,定性的には乱流の混合距離を小さくすることで改善しうることがこれまでの調査で分かっており,概ね順調に進捗しているといえる.

今後の研究の推進方策

接地境界層の再現性が不十分である現状を踏まえ,RANSで規定される混合距離の上限値の与え方が適切であるかの検討も含め,主に接地層でのスキームの改善に向けた研究を進める.また,RANSをベースとした手法が国内外の研究者によって提案されつつあることから,これらの手法を適宜取り入れることにより,さらなるスキーム改善の可能性について検討する.得られた結果を整理・統合することでterra incognita領域に適用可能な乱流スキームの定式化を提案し,成果の取りまとめを行う.

次年度使用額が生じた理由

今年度交付額については,概ね当初計画通りに予算を執行したものの,研究打ち合わせのための国内出張が計画よりも少なく済んだために,これに相当する額が執行残として生じた.

次年度使用額の使用計画

次年度は当研究計画の最終年度であることから,研究の取りまとめと成果発表を計画している.特に海外の学会に出席し研究成果を発表することが欠かせないため,次年度使用額については,海外の出張旅費や学会参加費に充てる予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Revisiting the bulk relation for heat flux in the free convection limit2016

    • 著者名/発表者名
      Kitamura, Y. and Ito, J.
    • 雑誌名

      Boundary-Layer Meteor.

      巻: 158 ページ: 93-103

    • DOI

      10.1007/s10546-015-0075-z

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] A LES Based Parameterization Scheme for the Terra Incognita in a Planetary Boundary Layer2016

    • 著者名/発表者名
      Kitamura, Y.
    • 学会等名
      22nd Symposium on Boundary Layers and Turbulence
    • 発表場所
      Salt Lake City, USA
    • 年月日
      2016-06-20 – 2016-06-24
    • 国際学会
  • [学会発表] 移流項の差分化によって生じるエネルギー散逸率の推定2016

    • 著者名/発表者名
      北村祐二,西澤誠也
    • 学会等名
      日本気象学会春季大会
    • 発表場所
      国立オリンピック記念青少年総合センター
    • 年月日
      2016-05-18 – 2016-05-21
  • [学会発表] Developing a parameterization scheme for the gray zone of the atmospheric boundary layer2015

    • 著者名/発表者名
      Kitamura, Y.
    • 学会等名
      AGU Fall Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2015-12-14 – 2015-12-18
    • 国際学会
  • [学会発表] Developing a parameterization scheme for the gray zone in the atmospheric boundary layer2015

    • 著者名/発表者名
      Kitamura, Y.
    • 学会等名
      International WS Issues in downscaling of climate change projection
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2015-10-05 – 2015-10-07
    • 国際学会
  • [学会発表] 乱流長さの解像度依存性の推定と大気境界層への適用2015

    • 著者名/発表者名
      北村祐二
    • 学会等名
      日本流体力学会年会
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      2015-09-26 – 2015-09-28

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公開日: 2017-01-06  

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